労働問題

組合書記官に対する契約拒否・団交拒否は不当労働行為?【国・中労委(学校法人河合塾)事件】

神奈川県で学習塾を経営しています。業務委託契約をしている講師が「労働組合」を作って団体交渉を申し入れてきました。当社は、この講師は労働者ではないと思っていたので、団体交渉には応じず、この講師との契約を打ち切りました。そうしたところ、この講師が労働委員会に救済申し立てをしたとのことです。
この講師は「労働者」にあたるのでしょうか。また、労働者にあたるとして、どのような救済命令が出される可能性があるでしょうか。
労働組合法にいう「労働者」は、労働基準法とは異なり、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」のことをいいます。その講師がこの定義に当たれば、契約の名目は問わず労働者に該当します。
救済命令は、不当労働行為によって侵害された利益を救済するためのものです。バックペイ(賃金支払)、原職復帰(もとの仕事に戻す)、ポスト・ノーティス(使用者に一定の文書の掲示などを指示する)などがありえます。
労働組合との団体交渉においては、不当労働行為にならないよう、弁護士と相談しながら慎重に対応しましょう。

不当労働行為とは

労働組合法第7条は、会社による不当労働行為を禁止しています。
不当労働行為とは、会社による労働組合の活動に対する妨害行為のことです。

具体的には、会社が以下の行為をすることが禁止されています。

  • 組合員であることを理由とする解雇その他の不利益取扱い(第1号)
  • 正当な理由のない団体交渉の拒否(第2号)
  • 労働組合の運営等に対する支配介入及び経費援助(第3号)
  • 労働委員会への申立て等を理由とする不利益取扱い(第4号)

労働組合や労働者は、不当労働行為を受けた場合、労働委員会に対して救済の申立てをすることができ、労働委員会が不当労働行為が認められると判断した場合には、使用者に対して、復職や賃金差額支払い、組合運営への介入の禁止などを含む救済命令を発することになります。

さて、今回は、組合書記官長に対する契約拒否や団交拒否などが不当労働行為に当たるか否かが問題となった事案をご紹介します。

国・中労委(学校法人河合塾)事件・東京地裁令和5.9.26判決

事案の概要

労働組合が、愛知県労働委員会に対し、本件組合の書記官長でありX法人に平成2年度から毎年度講師として出講していたC書記官長につき、X法人が、平成26年度の出講にかかる契約を締結しなかったこと、平成26年度の春期講習を担当させなかったこと、及びこれらの是非を議題とする本件組合からの団体交渉の申し入れに応じなかったことなどが、労働組合法7条1号から3号の不当労働行為に当たるとして、救済を申し立てたところ、愛知県労働委員会が、X法人の行為の一部が不当労働行為に当たるとして、X法人に対し、C書記官長の原職復帰や同人がX法人において就労するまでの間の報酬相当額の支払いなどを命じ、その余の申し立てを却下または棄却する命令を発しました。
これに対し、X法人及び本件組合が、中央労働委員会に対し、再審査申立てをしたところ、中央労働委員会が、上記申立てをいずれも棄却する命令を発しました。
本件は、X法人が、Y(国)に対し、上記命令のうち、X法人の再審査申立てを棄却した部分の取消しを求める事案です。

事実の経過

X法人と本件組合について

X法人は、愛知県名古屋市に主たる事務所をおく、主に大学受験予備校を主体とする教育事業を営む学校法人でした。
本件組合(首都圏大学非常勤講師組合K塾分会)は、X法人に就労する講師により組織された労働組合でした。

X法人とC書記官長の関係性

C書記官長は、X法人において平成2年度から平成25年度まで毎年度、G科およびH科の講師として授業を行なっていました。
また、C書記官長は、本件組合結成時からの組合員であり、結成初期から現在まで書記官長を務めていました。

出講契約の拒否

X法人は、年度ごとに授業を依頼する講師との間で出講契約(雇用契約または業務委託契約)を締結していました。
C書記官長は、平成22年度から平成25年度までは業務委託契約の形態で授業を行なっていました。

ところが、X法人は、平成25年11月22日、次の4つの理由を挙げた文書を持って、C書記官長に対する平成26年度出講契約を締結しない旨を通知しました。

団体交渉の拒否

本件組合は、平成26年3月4日、本件出講契約非締結及び同年度春期講習を担当させないことの是非を議論する団体交渉を申し入れましたが、X法人はこれを拒否しました。

救済申立て

本件組合は、愛知県労働委員会に対し、C書記官長について、X法人が、平成26年度の出講に係る契約を締結しなかったこと、同年度の春期講習を担当させなかったこと、及び本件組合からのこれらの是非を議題とする団体交渉に応じなかったことなどが、労働組合法7条1号から3号の不当労働行為に当たるとして救済を申し立てました。

愛知県労働委員会は、X法人の行為の一部が不当労働行為に当たるとして、C書記官長の現職復帰やバックペイの支払いなどを命じ、その余の申し立てを却下または棄却しました。

再審査の申立て

X法人は、X法人の行為の一部が不当労働行為に当たるとされたことについて、これを不服とし、他方、本件組合は、その余の申し立てを却下または棄却されたことについて、これを不服とし、中央労働委員会に対し、再審査を申し立てました。
これに対して、中央労働委員会は、いずれの再審査申立てを棄却する命令をしました。

本件訴えの提起

X法人は、中央労働委員会の行なった再審査申立棄却命令のうち、X法人が再審査申立棄却部分を不服として、その取消しを求める訴えを提起しました。

争点

本件では、
①C書記官長が労働組合法上の労働者に当たるか
②本件出講契約の非締結が労働組合法7条1号及び3号違反に当たるか
③C書記官長に平成26年度春期講習を担当させなかったことが労働組合法7条1号及び3号違反に当たるか
④平成26年3月4日の団体交渉拒否が労働組合法7条2号違反に当たるか
⑤救済内容が適法か
が争点となりました。

本判決の要旨

①C書記官長が労働組合法上の労働者に当たるか

争点①がなぜ問題となったか

まず、争点②から争点④までの不当労働行為該当性を判断する前提として、X法人との間で業務委託契約の形態で出講契約を締結していたC書記官長が、Xさんとの関係において労働組合法上の労働者に当たるか否か、が検討されました。

判断枠組み

裁判所は、労働組合法上の労働者に当たるか否かについて、次のように判断枠組みを示しました。

労組法3条が、同法における労働者につき、労働基準法9条とは異なり、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義するところ、労組法1条が労使対等の理念に基づく団体交渉の助成を同法の目的として規定していることに鑑みれば、労組法上の労働者は、必ずしも契約形態上労働契約によって労務提供をしている者に限られず、労働契約以外の契約形態によって労務提供をしている者であっても、その労務提供関係の実態に照らし労組法所定の保護を及ぼすのが相当である者を含むと解するのが相当である。

上記の点を踏まえると、労組法上の労働者に当たるか否かについては、当該具体の労務提供関係の実態にも着目した上で、
①労務提供者が相手方の事業遂行に不可欠な労働力として相手方の事業組織に組み入れられているか、
②労働条件や提供する労務の内容の全部又は重要部分を相手方が一方的・定型的に決定しているか、
③労務供給者への報酬が当該労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性質を有するか、
④労務供給者が相手方からの個々の業務の依頼に対して基本的に応ずべき関係にあるといえるか、
⑤労務供給者が、一定の時間的、場所的拘束を受け、相手方の指揮監督の下に労務の提供を行っていると広い意味で解することができるか、
⑥労務提供者が独立した事業者としての実態を備えているか
について実質的に検討し、これらの要素を総合考慮した上で判断するのが相当である(最高裁平成21年(行ヒ)第226号、第227号同23年4月12日第三小法廷判決・民集65巻3号943頁参照最高裁平成22年(行ヒ)第489号同24年2月21日第三小法廷判決・民集66巻3号955頁参照)。」

本件の検討

その上で、裁判所は、

・委託契約講師は、X法人の事業の遂行に不可欠な労働力を恒常的に供給する者として、X法人の事業組織に組み入れられていたといえること
・X法人と委託契約講師との契約内容は、X法人が一方的にかつ定型的に決定していたと認められること
・委託契約講師への報酬は、労務提供に対する対価としての性質を有するものとして支払われていたと認めるのが相当であること
・委託契約講師において、事実上、個々の業務の依頼に対する諾否の自由はなく、X法人からの個々の業務の委託に対して基本的に応ずべき関係にあったものとみるのが相当であること
・委託契約講師は年間を通じて時間的にも場所的にも相応の高速を受けていたものと言えること
・委託契約講師について、独立の事業者としての実態を備えていたと認めることはできないこと

などの諸般の事情を総合的に考慮し、「X法人との間で平成25年度出講契約を締結して委託契約講師として業務を行なっていたC書記官長は、X法人との関係において労働組合法上の労働者に当たるのと解するのが相当である」と判断しました。

争点②本件出講契約の非締結が労働組合法7条1号及び3号違反に当たるか

出講契約の非締結が不利益取り扱いに当たるか

裁判所は、講師評価の結果として本件出講契約が非締結となる可能性を窺わせる事情はなく、また、平成26年度以降も計6個までの出講契約が継続的に締結されることが十分に期待できる状況にあったと認定して、本件出講契約の非締結は不利益な取り扱いに当たると判断しました。

労働組合法7条1号違反に当たるか
非締結の理由に合理的な理由があるか

X法人は、非締結の理由として、次の4つの点を挙げていました。

そこで、まず、非締結理由①から④について、合理的な理由として認められるか否かが検討されましたが、次のとおり、いずれの理由にも合理性は認められないと判断されました。

非締結理由①について

非締結理由①については、
まず、C書記官長のなした本件文書の配布について、X法人の承認はなかったものの、施設管理権の一つとして構内の文書配布行為を禁止した目的は、構内の職場規律の維持及び生徒に対する教育的配慮にあると解されるから、X法人の承認がない場合でも当該文書の内容、配布の態様などに照らして、職場規律を見出すおそれや生徒に対する教育的配慮に欠ける恐れのない特別の事情が認められるときは、実質的には施設管理権を違法に侵害するものとはいえない倉田学園(大手前高〔中〕校・53年申立て)事件・最三小判平成6年12月20日判決)という判断枠組みを示しました。
その上で、本件文書は本件組合の主義主張やX法人に対する批判が記載されたビラとは性格が異なり、配布行為も業務に具体的な支障が生じたことを窺わせる事情はないとしました。

非締結理由②について

非締結理由②については、
C書記官長のビラ配布行為は、非締結の理由となり得るものの、同配布行為後も平成25年度出講契約が締結されたことからすると、X法人が、当該ビラ配布行為を出講契約締結に影響する事情として重視していたとはいえないとしました。

非締結理由③について

非締結理由③については、
X法人は平成22年に本件組合機関紙の不実記載などについて秘密保持義務違反などの恐れがあるとして、厳重に警告・注意する旨の書面を通知しているが、その後もC書記官長と出講契約を締結し続けており、上記機関紙にかかる問題は出講契約締結の可否に影響を与えていなかったとしました。

非締結理由④について

非締結理由④については、
C書記官長に対して当該発言の有無などを確認して注意、指導することはなかったことが認められることなどにより、非締結の合理的理由とは認められないとしました。

C書記官長との対立関係

また、これに加え、裁判所は、C書記官長は、本件組合結成時からの組合員であり、結成当時から書記官長に就任するなど、積極的に組合活動に従事していたと認められ、X法人との間で対立関係を生じることがあったことを指摘しました。

まとめ

裁判所は、以上の事情を総合的に考慮すると、「X法人が平成26年度出講契約を締結しなかったことは、C書記官長の組合活動を嫌悪する不当労働行為意思に基づくものであり、労働組合法7条1号の不当労働行為に該当するものと判断しました。

労働組合法7条3号違反に当たるか

また、裁判所は、本件出講契約は、本件組合の中心人物であるC書記官長を排除して、本件組合の組織及び活動を弱体化させる不当労働行為意思に基づく支配介入であったと認めるのが相当であるとし、労働組合法7条3号の不当労働行為にも該当するものと判断しました。

争点③C書記官長に平成26年度春期講習を担当させなかったことが労働組合法7条1号及び3号違反に当たるか

裁判所は、争点②によって、本件出講契約の非締結が不当労働行為に当たる以上、C書記官長に平成26年度春季講習を担当させなかったことも、労働組合法7条1号、3号の不当労働行為に該当すると判断しました。

争点④平成26年3月4日の団体交渉拒否が労働組合法7条2号違反に当たるか

裁判所は、本件組合からの本件出講契約非締結及び春季講習を担当させないことの是非を議題とする団体交渉の申し入れに対し、X法人はこれが労働条件ではないことを理由に団体交渉を拒否していたものの、当該議題はX法人に処分可能な事項といえることから、義務的団体交渉事項にあたり、団交拒否の正当事由は認められないため、労働組合法7条2号の不当労働行為に当たると判断しました。

争点⑤救済内容が適法か

判断枠組み

裁判所は、まず、労働委員会による救済命令の違法性を判断する上で、以下の通り判断枠組みを示しました。

労組法27条が、労働委員会という行政機関による救済命令の方法を採用して不当労働行為禁止規定(同法7条)の実効性を担保しようとした趣旨は、使用者による組合活動侵害行為によって生じた状態を上記命令によって直接是正することにより、正常な集団的労使関係秩序の迅速な回復、確保を図るとともに、使用者の多様な不当労働行為に対してあらかじめその是正措置の内容を具体的に特定しておくことが困難かつ不適当であるため、労使関係について専門的知識経験を有する労働委員会に対し、その裁量により、個々の事案に応じた適切な是正措置を決定し、これを命ずる権限を委ねたものと解される。このような裁量権を与えた趣旨に照らすと、訴訟において労働委員会の救済命令の内容の適法性が争われる場合、裁判所は、労働委員会の前記裁量権を尊重し、その行使が前記趣旨、目的に照らして是認される範囲を超え、又は著しく不合理であって濫用にわたると認められるものでない限り、当該命令を違法とすべきではないと解すべきである(最高裁昭和45年(行ツ)第60、第61号同52年2月23日大法廷判決・民集31巻1号93頁、最高裁令和3年(行ヒ)第171号同4年3月18日第二小法廷判決・民集76巻3号283頁)。」

原職復帰及びバックペイの支払いという救済方法の相当性

裁判所は、まず、原職復帰という救済方法の相当性について、
C書記官長について、平成25年度以前と同様の出講契約が継続的に締結されることが十分に期待できる状況にあったと認められ、また、同様の条件で復職させることは可能であることを合わせて考慮すると、中央労働委員会による原職復帰命令は、「組合活動侵害行為によって生じた状態を直接是正するという救済命令の目的に沿うものである上、私法的法律関係から著しくかけ離れた内容であるとも、X法人に不可能を強いる内容であるともいえない
と判断しました。

次に、バックペイの支払いという救済方法の相当性についても、原職復帰を命ずる以上、これとともに、X法人に対してバックペイの支払いを命ずることも同様である、と判断しました。

したがって、中央労働委員会命令が維持した初審命令における救済方法自体が裁量権の濫用に当たるとは認められないとしました。

バックペイの支払いを命ずるにあたっての中間収入の控除の要否

その上で、バックペイ支払命令の際の中間収入の控除の要否については、本件出講契約非締結による収入減(X法人での収入の6割程度)、X法人の不当労働行為が再就職をより困難にさせたことなど、当該非締結の与えた打撃は甚大であり、また、本件組合についても、新規加入者がなく脱退者が出て、公然化を躊躇させるなど、「本件組合の組合活動一般に対して与えた侵害の程度は深刻なものと言わざるを得ない」としました。
したがって、中間収入を控除しないことをもって、救済の判断において合理性を欠くとは言えず、「裁量権の限界を超えた違法があるとはいえない」と判断しました。

まとめ

以上より、裁判所は、初審命令における救済内容には理由があるとして、X法人の申立てを棄却した中央労働委員会の命令は適法であると判断しました。

結論

よって、再審査申立て棄却命令の取消しを求めるX法人の本件訴えは、認められませんでした。

ポイント

どんな事案だったか?

本件は、X法人が、中央労働委員会がなした再審査申立て棄却命令について、取消しを求める訴えを提起した事案でした。

何が問題となったか?

本件では、

①C書記官長が労働組合法上の労働者に当たるか
②本件出講契約の非締結が労働組合法7条1号及び3号違反に当たるか
③C書記官長に平成26年度春期講習を担当させなかったことが労働組合法7条1号及び3号違反に当たるか
④平成26年3月4日の団体交渉拒否が労働組合法7条2号違反に当たるか
⑤救済内容が適法か

が問題となりました。

ポイント

C書記長が労働組合法の労働者に当たると判断されたこと

まず、本判決のポイントの1つとして、C書記長が労働組合法上の労働者に当たると判断されたことが挙げられます。

労働組合法の労働者とは?

労働組合法上の「労働者」は、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」とされています。
この「労働者」の意義は、労働組合による団体交渉を助成するための保護を及ぼすべきものはいかなる者かという観点から考えられており、労働基準法や労働契約法の定義とは異なります。

裁判所が示した判断枠組み

裁判所は、労組法上の労働者に当たるか否かについては、労務提供関係の実態にも着目した上で、
①労務提供者が相手方の事業遂行に不可欠な労働力として相手方の事業組織に組み入れられているか、
②労働条件や提供する労務の内容の全部又は重要部分を相手方が一方的・定型的に決定しているか、
③労務供給者への報酬が当該労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性質を有するか、
④労務供給者が相手方からの個々の業務の依頼に対して基本的に応ずべき関係にあるといえるか、
⑤労務供給者が、一定の時間的、場所的拘束を受け、相手方の指揮監督の下に労務の提供を行っていると広い意味で解することができるか、
⑥労務提供者が独立した事業者としての実態を備えているか
について実質的に検討し、これらの要素を総合考慮した上で判断するのが相当であるとの判断枠組みを示しました。

契約の名称は問わないので注意

本件においては、X法人とC書記長との間の契約は、業務委託契約とされていました。
しかし、裁判所は、上記の判断枠組みで示された①から⑥のポイントに着目しながら、C書記官長は、労働組合法上の「労働者」に当たると判断しています。
このように、労働契約以外の契約形態によって労務提供をしている者であっても、その労務提供関係の実態に照らして労働組合法の保護を及ぼすのが相当であると解される者については、「労働者」に当たると判断されることがあるので、注意が必要です。

原職復帰の重要性が示されていること

裁判所は、争点②において、本件出講契約の非締結が不当労働行為に当たると判断した上で、争点⑤において、救済命令の適法性を検討し、原職復帰という救済方法について、
・C書記官長について、平成25年度以前と同様の出講契約が継続的に締結されることが十分に期待できる状況にあったと認められること、
・同様の条件で復職させることは可能であること
などを合わせて考慮すると、中央労働委員会による原職復帰命令は、「組合活動侵害行為によって生じた状態を直接是正するという救済命令の目的に沿うものである上、私法的法律関係から著しくかけ離れた内容であるとも、X法人に不可能を強いる内容であるともいえない」として、その相当性を認めています。
労働者にとって、単にバックペイが認められたとしても、真の救済に資するとはいえません。
この点、本判決における裁判所の判断は、契約締結の強制を救済として認めるものであり、労使関係における団体権の尊重(重要性)を改めて示すものであるといえます。

弁護士にご相談ください

労使間の紛争は、会社にとっても大きな悩みたねです。
労働組合から団体交渉が申し入れられた場合、突然のことに、どのように対応してよいかわからず、慌ててしまうこともあるかもしれません。
しかし、団体交渉に対して誠実な対応をとらずに放置したり、無視したりしてしまうと、不当労働行為に当たるとして、救済命令が行われ、さらに救済命令に違反すると、本件のような損害賠償請求にまで発展することがあります。
加えて、従業員との関係をさらに悪化させ、会社内の就業環境に大きな問題が生じてしまったり、取引先や顧客からの信頼を失ってしまったりするおそれもあります。

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