偽装フリーランスとは?【弁護士が解説】
令和5(2023)年4月28日、フリーランスの方が安心して業務を遂行できるような環境を整えるため、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(いわゆるフリーランス保護法)が成立し、令和6年11月1日に施行されることになりました。
フリーランス保護法の具体的な内容については、フリーランス保護法ってどんな法律?【弁護士がポイント解説】解説していますのでご覧ください。
フリーランス保護法の施行が迫る中、実態としては労働者(従業員)と同じ働き方をしているにもかかわらず、見せかけだけフリーランスの外形を整え、労働関係法令の潜脱を図ろうとする「偽装フリーランス」が問題になっています。
このページでは、「偽装フリーランス」に着目して、具体的な判断要素や要注意ポイントについて解説します。
偽装フリーランスとは?
フリーランスとして活躍している方々からは、
「フリーランスのはずなのに、会社の社員と同じように管理されてる…」
「会社の社員と働き方はまったく同じなのに、なぜか業務委託契約を締結させられた…」
「社会保険料の負担があるからといって、フリーランスの扱いにさせられている…」
といった声が聞かれることがあります。
フリーランスは本来、就労場所や就労時間、業務量などの働き化に裁量が認められており、かつ、不特定多数の取引先との間で相互に合意した契約条件の内容で働くことができる点で経済的な自立性が認められています。
もっとも、「社会保険料を負担したくないから」「労働基準法などの労働関係法令の適用を受けたくないから」「成果を見てから、報酬を支払うかどうか決めたいから」といった理由で、労働者と雇用契約を締結することを拒み、業務委託契約の締結を強要している企業が散見されます。
また、フリーランスに関する十分な理解が進んでいないために、意図せず、フリーランスが本来有するべき自立的な働き方を抑制し、働き方の裁量や経済的自立性がない労働者と同じ働き方を強いている企業も見られます。
このようなフリーランスの「自立的な働き方」を阻害するような働き方を強いることは、「偽装フリーランス」と呼ばれています。
業務委託とは
偽装フリーランスは、悪意で行われているケースもありますが、同様に多いのが、無知や誤解を理由とするものです。
偽装フリーランスを許さないためにも、まずはフリーランスに業務委託する場合と従業員を雇用する場合のちがいについて理解しておきましょう。
業務委託契約
業務委託契約の類型
企業とフリーランスとの間で締結される業務委託契約は、企業が会社の一部の業務を専門性やスキル、実績、交渉力、経験等を有する法人や個人(フリーランス)に委託して業務を遂行してもらい、その業務遂行への対価を支払う契約です。
業務委託契約には、請負契約(民法第632条)と準委任契約(民法第656条)という2つの契約類型があります。
請負契約型
請負契約は、請負人がある仕事を完成することを約束し、注文者がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束することによって効力を生ずる契約です。
請負契約型の場合には、受注者は契約不適合責任を負うことになるため、契約の内容に適合しない場合には、受注者は発注者から履行の追完や代金減額、損害賠償、契約の解除といった契約不適合責任(民法第559条・562条~564条)を負うことになります。
業務委託契約の中で請負契約型が用いられる取引には、ECサイトの制作やデザイン、プログラム・システム開発、翻訳などが挙げられます。
準委任契約型
準委任契約は、委託者が受注者に対して法律行為以外の業務を遂行することを委任し、受託者がこれを承諾することによって効力を生ずる契約です。
準委任契約では請負契約のように契約不適合責任が生ずることはありませんが、受託者は、委任の本旨に従って善良な管理者の注意もって、委託された事務を処理する義務を負います(民法第644条)。
業務委託契約の中で準委任契約型が用いられる取引には、コンサルティングやエンジニア業務などが挙げられます。
業務委託の特徴
会社とフリーランスは、対等な契約関係に基づくため、両者の間に主従関係はなく、フリーランスは会社の指揮監督を受けません。
そのため、フリーランスには、就労場所や就労時間、業務量、業務の方法、業務をするか否かなどにおいて裁量が認められます。
また、フリーランスは特定の企業との間でしか仕事をすることができないということはなく、不特定多数の取引先との間で業務委託契約を締結し、それぞれの契約内容や契約条件に基づいて業務を遂行することができます。
雇用契約
これに対して、雇用契約(民法第623条)は、労働者が使用者に対して労働に従事することを約束し、使用者がこれに対して報酬(賃金)を与えることを約束することによって効力を生ずる契約です。
雇用契約では、就業規則や雇用契約書等で定められた条件によって人材である労働者を労働に従事させ、その労務提供について使用者が対価を払うことになっているため、使用者と労働者という主従関係が生じます。
そのため、労働者には、就労場所や就労時間、業務量、業務の方法、業務をするか否かなどにおいて裁量が認められず、使用者の指揮監督に服することになります。
また、労働者は、使用者が定めた就業規則や労働条件の下で働くことになります。
ギグワークとスポットワークのちがい
業務委託契約と雇用契約のちがいは上述のとおりですが、中でも誤解の多く混同されることの多い「ギグワーク」と「スポットワーク」のちがいについても少し触れておきます。
ギグワークとは
ギグワーク(クラウドソーシング・シェアリングエコノミー)とは、オンラインプラットフォームでマッチングされる単発の業務委託契約の仕事のことをいいます。
ギグワークでは、まず発注者と受注者がインターネットのプラットフォームやスマートフォンのアプリケーションを利用して、発注者側は業務やタスクの内容を、受注者側は自分の経歴やスキルなどの情報をそれぞれ登録します。
そして、発注者と受注者は互いの情報を検索して、業務委託契約を締結し、受発注の取引を行うことになります。
スポットワークとは
これに対して、スポットワーク(スポットマッチング)とは、オンラインプラットフォームでマッチングされる短時間や単発の雇用契約の仕事のことをいいます。
スポットワークでは、まず求人企業と求職者がインターネットのプラットフォームやスマートフォンのアプリケーションを利用して、求人企業側は短時間や単発の求人情報を登録し、求職者側は自分の履歴書の情報を登録して応募します。
そして、求職者が求人情報を検索し、マッチングが成立(求人企業と求職者との間の雇用契約)すると、求職者が労働者として求人企業(会社)の短時間や単発の仕事をすることになります。
業務委託と雇用のちがい(まとめ)
業務委託契約(請負型・準委任型)と雇用契約のちがいをまとめると、次のように整理することができます。
関連する法律
ここで、フリーランスとの業務委託契約において適用される法律について確認しておきましょう。
事業者であるフリーランスとの取引においては、
・私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)
・下請代金支払遅延等防止法(下請法)
・特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)
などが関連法として適用されます。
さきほど説明したとおり、フリーランスとの取引は業務委託契約であり、雇用契約ではないため、雇用契約における民法の特則である労働基準法やその他の労働関係法令は適用されません。
しかし、仮にフリーランスとして業務委託契約を締結していたとしても、会社側の指揮監督下におかれ、勤務場所や勤務時間、業務の手順について拘束を受けているなどの場合には、実質的には「労働者」であるとして、労働関係法令が適用されることになります。
偽装フリーランスの実態
このようにフリーランスとして業務委託契約を締結していた場合であっても、実態が「労働者」に該当すると判断された場合には労働基準法をはじめとする労働関係法令が適用されることになります。
令和2(2020)年5月に内閣官房日本経済再生総合事務局が発表したフリーランス実態調査結果によると、事業者から業務委託を受けて仕事を行っているフリーランスのうち、その「業務の内容や遂行方法について、具体的な指示をうけている」と答えた人は36.8%に及びました。
また、「フリーランス・トラブル110番」に寄せられた令和5(2023)年4月から令和6(2024)年3月までの相談件数のうち、「労働者性」に関する相談は、全体の5.7%に及んでいます。
これらの結果からみると、やはり多くのフリーランスの方々が「偽装フリーランス」(=「労働者性」)に悩んでいることがわかります。
※「フリーランス・トラブル110番」とは?
フリーランス・トラブル110番とは、フリーランスと発注事業者等との取引上のトラブルについて、弁護士にワンストップで相談できる窓口のことであり、令和2(2020)年に設置されました。
フリーランス保護法第21条では、国は、特定受託事業者に駆る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備に資するよう、相談対応などの必要な体制の整備等の措置を講ずるものとされており、今後は、フリーランス・トラブル110番の活用により、トラブルに関する相談から公正取引委員会・中小企業庁、厚生労働省の窓口へ申告することができるような体制の整備等が期待されています。
労働者性の判断
では、偽装フリーランスに該当するか否か、より具体的にいえば、「労働者」に該当するといえるか否かはどのように判断すればよいのでしょうか。
労働者とは
労働基準法第9条は、「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と規定しています。
厚生労働省のガイドラインによると、「労働者」に該当するか否か、すなわち労働者性が認められるか否かは、労働基準法第9条の規定に基づき、
①労働者が他人の指揮監督下において行われているかどうか、すなわち、他人に従属して労務を提供しているかどうか
②報酬が、「指揮監督下における労働」の対価として支払われているかどうか
という2つの基準によって判断されます。
この2つの基準は総称して「使用従属性」と呼ばれています。
使用従属性の判断基準
「使用従属性」が認められるか否かは、請負契約や(準)委任契約といった契約の形式・名称にかかわらず、契約の内容、労務提供の形態、報酬その他の要素を総合的に考慮し、それぞれの事案ごとに個別具体的に判断されます。
かかる判断における判断基準や判断要素は、これまでの裁判例によって確立されてきており、労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(昭和60年12月19日)において、次のようにまとめられています。
◎「使用従属性」に関する判断基準
①「指揮監督下の労働」であること
ア 仕事の依頼、業務従事の指⽰等に対する諾否の⾃由の有無
イ 業務遂⾏上の指揮監督の有無
ウ 拘束性の有無
エ 代替性の有無(指揮監督関係を補強する要素)
②「報酬の労務対償性」があること
◎「労働者性」の判断を補強する要素
ア 事業者性の有無
イ 専属性の程度
ウ その他
偽装フリーランスを予防するために
さきほど説明したとおり、労働者性の判断においては、次の各判断要素が総合的に考慮されます。
もっとも、これらの判断の基準のいずれかに該当するからといって、直ちに労働者性が認められるわけではなく、個々の事情に沿って具体的に検討する必要があるため、労働者性の判断は非常に難しいのが現実です。
そのため、「結局はどこまでならOKなの?」「どこからは偽装フリーランスに該当してしまうの?」という不安が残ります。
フリーランス協会は、このような不安に対応して、「偽装フリーランス防止のための手引き」において、厚生労働省が公表する「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」をもとに、各判断要素について注意すべき例や許容範囲の例を紹介しています。
以下、詳しくその内容をみていきましょう。
①「指揮監督下の労働」になっていないか
ア 仕事の依頼、業務従事の指⽰等に対する諾否の⾃由の有無
拒否の自由の有無とは、発注者などから具体的な仕事の依頼や業務に従事するよう指示があった場合などにおいて、その依頼や指示等を受けるか、受けないかを受注者(フリーランス)側で決めることができるか否かを意味します。
仮にフリーランスに拒否の自由がない場合には、労働者性が肯定される方向に働く要素となります。
したがって、締結済みの契約に含まれない業務や基本契約・個別契約を問わず、新しい契約に関して、拒絶する選択肢なく強要することは許されません。
要注意の例
・営業組織の育成強化を委託していたフリーランスに対し、目標の営業成績に届かないことを理由に、自身で営業業務(元の発注内容とは別の業務)を行うように迫る
・既存システムの改修を委託していたフリーランスに対し、新規アプリ開発や保守運用など、新たな案件を有無を言わさず強いる …etc
許容範囲の例
・新製品広報を委託していたフリーランスに対し、契約内容である広報業務の一環として、プレスリリースの追加配信やメディアアプローチを依頼する …etc
ただし、依頼を実質的に拒否することができない実態がある場合には、許諾の自由がないと判断されるおそれがあるため、注意しなければなりません。
イ 業務遂行上の指揮監督の有無
業務遂行上の指揮監督の有無とは、業務の内容や遂行方法について、発注者等からフリーランスが具体的な指揮命令を受けているか否かを意味します。
仮にフリーランスが業務遂行上の指揮監督を受けている場合には、労働者性が肯定される方向に働く要素となります。
したがって、業務遂行の手順や進め方などに関して、業務の性質上の理由がない限りフリーランスに一任しなければなりません。
また、業務の性質上、一定の指定が必要な場合であっても、フリーランスの裁量や創造性を発揮する余地がなくなるほどに具体的な指定をすることは許されません。
要注意の例
・マニュアルや台本が存在しており、その手順を遵守するよう指導する
・隙間なく断続的にタスクを依頼し続けることで、フリーランスの業務遂行への裁量をなくしてしまう …etc
許容範囲の例
・組織内で一般的・従来行ってきた手順を参考として示した上で、具体的な業務の進め方はフリーランスに委ねる
・システム開発やデザインなど、業務の性質上、一貫性や統一感が求められる場合に仕様書や設計書、レギュレーション等を示す
・業務の性質上、一定期限までの完了が求められる場合に納期を示す
・セキュリティや安全衛生上等の観点からルールの遵守を求める(例えば機密データをローカルPCにダウンロードして作業していたのをやめさせるなど) …etc
ウ 拘束性の有無
拘束性の有無とは、発注者等から、フリーランスが勤務場所や勤務時間が指定され、管理されていないか否かを意味します。
仮にフリーランスに発注者等からの拘束性が認められる場合には、労働者性が肯定される方向に働く要素となります。
したがって、業務の性質上必要な場合を除き、フリーランスの勤務場所や勤務時間を指定したり、労務や勤怠の管理を行ったりしないようにしなければなりません。
要注意の例
・日々の勤務時間を指定し、勤務時間や休憩時間の都度、開始・終了報告を求める
・従業員の勤怠管理と同様にタイムカード打刻やログをとっている
・業務上どこでも可能な個人作業の際も、出社を求める …etc
許容範囲の例
・業務の性質上、業務遂行する場所や時間が限定される場合に、その場所や時間を連絡する
・業務遂行に必要な MTG をオフィスで行う際、あらかじめ日程調整した上で出社を求める
・依頼した業務スケジュールとの兼ね合いで、作業実施日を指定する …etc
エ 代替性の有無
代替性の有無とは、フリーランス本人に代わって、他の人が労務を提供することが認められているか否か、フリーランス本人の判断によって、補助者を使うことが認められているか否かを意味します。
仮にフリーランスに代替性が認められない場合には、労働者性が肯定される方向に働く要素となります。
要注意の例
・フリーランスが同意していないにもかかわらず、補助者を使うことを一切禁止する …etc
許容範囲の例
・双方合意の上で、第三者への再委託を発注者が承認した場合に限って可能とする …etc
②「報酬の労務対償性」があるか
報酬の労務対象性とは、支払われる報酬の性格が、発注者等の指揮監督の下で一定時間労務を提供していることに対する対価ではないと認められるか否かを意味します。
仮にフリーランスへ支払われる報酬について労務対償性が認められる場合には、労働者性が肯定される方向に働く要素となります。
したがって、発注者等は、フリーランスに対して、労務提供した時間に対する対価ではなく、契約遂行に対する対価として報酬を管理し、支払わなければなりません。
要注意の例
・深夜手当のように時間帯等によって割増での支払いを行う
・契約上の稼働目安時間を拘束時間と捉え、余った時間を他の新たな業務で消化させる
・従業員との区別なく時間単価で報酬を支払う …etc
許容範囲の例
・タイムチャージでの報酬設定が馴染むような専門性を生かした履行割合型の業務委託において、フリーランスの専門性・経験値及び委託業務の難易度等を考慮して定めた時間単価と、業務遂行にかかる目安時間数を乗じて月次報酬額を定める契約、または、申告された実稼働時間数を乗じて支払報酬額を精算する契約とすること …etc
労働者性の判断を補強する要素について
ア 事業者性の有無
事業者性の判断においては、たとえば、仕事に必要な機器や器具等を発注者等とフリーランスのどちらが負担しているかが問題となります。
仮に、フリーランスが業務に必要な機材等を自らそろえて試用している場合には、労働者性が否定される方向に働く要素となります。
ただし、社内のセキュリティ保護の観点などからパソコンやソフト等の業務に必要な機材を発注者が貸与する場合もあるため、このような場合にフリーランスが機材等をそろえていないからといって労働者性が直ちに肯定されるということではありません。
また、事業者性の判断においては、報酬の額も問題となり得ます。
仮に、フリーランスが発注者から受け取る報酬の額が、同種の業務に従事する労働者と比較して著しく高額になっている場合には、働者性が否定される方向に働く要素となります。
なぜなら、フリーランスの報酬が、同種の業務に従事する労働者の水準よりも明らかに高く設定されている場合には、業務委託という外注でなければ得られないフリーランスの専門性や知識、知見の存在を考慮したり、フリーランスが自律的であるからこそ負う事業のリスクや社会保険料の負担等を踏まえたりすることによって当該報酬額が決定されたと考えられるからです。
イ 専属性の有無
専属性とは、フリーランスの特定の発注者等に対する専属性が高いといえるか否かを意味します。
したがって、フリーランスとの独占契約については、できる限り締結しない方が労働者性が否定される方向に働く要素となります。
委託する業務の内容によっては、フリーランスの特定の発注者等に対する専属性が高まる場合もありますが、フリーランスが他の事業者から業務を受託することを妨げることは絶対に許されないため、注意しなければなりません。
ウ その他
ここまで説明した要素の他にも、たとえば発注者等が、従業員と同じルールやシステムをフリーランスにも適用している場合には、労働者性が肯定される方向に働く要素となります。
たとえば、フリーランスの就業環境向上を目的に、社内規則等に基づき、有償又は無償で福利厚生と同等のサービスを提供したり、安全衛生のために避難訓練への参加を呼びかけたり、発注した業務の背景や全体像理解のために全社イベントや他部署のミーティングに誘ったりすることは許容され得ますが、就業規則や服務規程の遵守を求めたり、従業員と同じシステムで給与明細を発行したり、源泉徴収を行ったりするようなことは許されません。
稼働状況の把握方法
フリーランスに業務委託をした場合、委託者としては、業務遂行状況やスケジュールなどの確認はしておきたいと考えるのが通常です。
もっとも、業務進捗の確認やスケジュールの確認等の報告を求める場合、従業員に対して行うような労務・勤怠管理と同じような形で報告を求めてしまうと、労働者性を肯定する方向に働く要素となってしまいます。
特に、履行割合型の業務において、稼働時間の報告を求める場合には、開始時刻や終了時刻について、「出勤・退勤」といった言葉を使ったり、業務開始時刻と業務終了時刻を都度報告させたり、タイムカードを切らせたりしないように注意しなければなりません。
フリーランス協会からは、それぞれの業務委託の目的に沿って、次のようなフォーマットが挙げられていますので、業務報告等を求める場合には、このような書式を参考にしてみるのもよいかもしれません。
①業務進捗状況や達成度合いなどについて確認をする観点から、対象期間において実施した業務内容やその結果について報告を求める場合
【フリーランスの稼働報告・把握の仕方の例:フリーランス協会(gisou-freelancer-prevention.pdf (freelance-jp.org))】
②履行割合型の業務において、稼働時間の報告を求める場合
【フリーランスの稼働報告・把握の仕方の例:フリーランス協会(gisou-freelancer-prevention.pdf (freelance-jp.org))】
まとめ
今回は、フリーランス(業務委託契約)といいながら、その実態としては労働者(雇用契約)に該当する「偽装フリーランス」について解説してきました。
「偽装フリーランス」に当たるか否かは、特に会社側の指揮監督下におかれた労働であるか否かを確認する必要があります。
このような労働者性の判断に際しては、
・仕事を拒否する自由があるか否か
・仕事のやり方についての具体的な指示を受けているか否か
・勤務場所や勤務時間を管理されているか否か
・業務を他人に委託する自由があるか否か
などの点がメルクマールとして大きなポイントとなります。
フリーランス協会は、偽装フリーランスを防止するために次のようなチェックリストも公開しています。
フリーランスに業務を発注するときは、このようなチェックリストを参照し、本ページで解説した労働者性に関する判断基準とも照らし合わせながら、「偽装フリーランス」にならないように注意することが大切です。
【偽装フリーランス防止のためのチェックリスト:フリーランス協会(gisou-freelancer-prevention.pdf (freelance-jp.org))】
弁護士にご相談ください
悪意または無知、誤解などによって、フリーランスと業務委託契約を締結しておきながら、実態としては「労働者」となるような働かせ方をしてしまうことは大きな問題です。
しかし、過度に「偽装フリーランス」に怯えて、たとえば、フリーランスの人については会社の飲み会に誘わないようにしている、トイレに一緒にいかないように徹底している、フリーランスの人とは一緒に働かないようにしているなどの状況に陥ってしまっては、フリーランスに業務委託をすることにより、専門的な知見やスキル、ノウハウを調達したり、従業員の負担や業務量を軽減したりしようとする目的を達成することができなくなってしまいます。
「偽装フリーランス」に該当するか否か、すなわち「労働者性」に該当すると判断されるケースであるか否かは、このページで説明したとおり様々な考慮要素を個別具体的に検討していく必要があります。
フリーランスとの業務委託契約において注意すべき点や関わり合い方、「偽装フリーランス」に該当しないか否かなどの点に不安や疑問を覚えたときには、ぜひお気軽に弁護士にご相談ください。