法律コラム

育成就労制度とは?改正法の概要【弁護士が解説】

令和6年6月21日、「育成就労制度」を創設することなどを内容とする「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技術実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号)が公布されました。

この改正法は、一部規定を除いて、公布日から3年を超えない範囲で政令で定める日に施行されます。

今回は、本改正法の概要(育成就労制度)について解説します。
(参照:厚労省HP「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」

本改正法は何を目的としているの?

これまで、日本で培われた技術や技能、知識などを開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを趣旨として、外国人技能実習制度が実施されてきました。
もっとも、外国人技能実習制度では、
キャリアパスが不明瞭である
・労働者としての権利保護に欠ける
不適正な送出・受入れ・管理事例が報告されている
などの課題がありました。

そこで、このような外国人技能実習制度を発展的に解消し、

  • 就労を通じた人材育成と人材確保を目的とする新たな在留資格として育成就労の在留資格を創設し、育成就労計画の認定及び監理支援を行おうとする者の許可の制度並びにこれらに関する事務を行う外国人育成就労機構を設けること
  • 1号特定技能外国人支援にかかる委託の制限
  • 永住許可の要件の明確化

などの措置を講ずることを目的とする本改正法(「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技術実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号))が成立しました。

本改正法は、一部規定を除き、公布日から3年を超えない範囲で政令で定める日に施行されます。

入管法について

①新たな在留資格創設

技能実習の在留資格を廃止し、「育成就労産業分野」(特定産業分野のうち就労を通じて技能を修得させることが相当なもの)に属する技能を要する業務に従事すること等を内容とする「育成就労」の在留資格を創設します。
さらに、一定基準に適合する企業の外国事業所の職員が技能等を修得するための「企業内転勤2号」の在留資格を創設します。

②特定技能の適正化

特定技能所属機関(受入れ機関)が1号特定技能外国人の支援を外部委託する場合の委託先を、登録支援機関に限るものとします。

③不法就労援助罪の厳罰化

外国人に不法就労活動をさせる等の不法就労助長罪の罰則を引き上げます。
具体的には、拘禁刑3年以下または罰金300万円以下であったものが、拘禁刑5年以下または罰金500万円以下(*併科可)となります。

④永住許可制度の適正化

永住許可の要件を一層明確化し、その基準を満たさなくなった場合などの取消事由を追加します。
ただし、特段の事情がない限り、在留資格を変更して引き続き在留を許可します。

育成就労法(技能実習法の抜本改正)

①育成就労制度の目的・基本方針

法律名が「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(育成就労法)に改められます。
育成就労制度では、育成就労産業分野において、特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保することを目的としています。
政府は基本方針及び分野別運用方針を定めるものとし、分野別運用方針において、各分野の受入れ見込数を設定するものとしています。

②育成就労計画の認定制度

育成就労計画の認定にあたって、

  • 育成就労の期間が3年以内であること(主務省令で定める相当の理由(試験不合格)がある場合には、最大で1年の延長が可能)
  • 業務、技能、日本語能力その他の目標や内容
  • 受入れ機関の体制
  • 外国人が送出機関に支払った費用額等が基準(詳細な要件は、主務省令で定められます)に適合していること

といった要件を設けます。

転籍の際には、転籍先において新たな育成就労計画の認定を受けるものとし、当該認定は、
(ア)やむを得ない事情がある場合や、
(イ)同一業務区分内であること、就労期間(1〜2年の範囲で業務の内容等を勘案して主務省令で規定)・技能等の水準・転籍先の適正性にかかる一定の要件(詳細な要件は、主務省令で定められます)を満たす場合(本人意向の転籍)
に行います。

*上記(イ)に記載した「一定の要件」については、上述の通り、主務省令において定められることになりますが、具体的には
・同一期間での就労期間については分野ごとに1〜2年の範囲で設定すること
・技能等の水準については、技能検定試験基礎級等及び分野ごとに設定するA1〜A2相当の日本語能力に係る試験への合格
・転籍先が、育成就労を適正に実施する基準を満たしていること
を要件とすることを予定しています。

③関係機関の在り方

管理団体に代わる「監理支援機関」については、外部監査人の設置を許可要件とします。
監理支援機関は、受入機関と密接な関係を有する役職員を当該受入れ機関に対する業務に関わらせてはならないものとされます。
また、外国人技能実習機関に代わる「外国人育成就労機構」を設立し、育成就労外国人の転籍支援や、1号特定技能外国人に対する相談援助業務を追加します。

本改正に伴う制度の見直しの概要

これまでの技能実習制度から育成就労制度への見直しのイメージは以下の通りです。

(参照:厚労省HP「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」

育成就労制度に関する悩みがあるときは

法務省は、育成就労制度・特定技能制度Q&AをHPに公開しています。
育成就労制度と技能実習制度は何が違うの?
育成就労制度と特定技術制度は何が違うの?
育成就労外国人はどの分野で働くことができるの?
などについて詳しく知りたいときは、「育成就労制度・特定技能制度Q&A | 出入国在留管理庁 – 法務省」を参照してみてください。

弁護士にご相談ください

深刻な人手不足を背景として、外国人労働者の受け入れは欠かせない状況にあります。
本改正法は、外国人にとっても魅力ある制度を構築し、外国人から「選ばれる国」になることにあります。
日本人だけでなく、“外国人からも選ばれる企業“になるために、ぜひ本改正の内容にも目を向けてみてはいかがでしょうか。
外国人の雇用についてお悩みがある場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。