法律コラム

ふるさと納税の返礼品をめぐるトラブル!贈与契約の解除はできるか?【横浜地裁川崎支部令和7年1月21日判決】

弁護士法人ASKの弁護士相談・顧問契約をご希望の方はこちらまで

贈与契約とは?

民法549条では、「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」と定められています。

たとえば、Aさんが、Bさんに対して、「私が持っている自動車αをタダでBさんにあげるよ」と言います。これに対して、Bさんも「ありがとう。それならαをもらうね。」と受け入れます。こうすれば、贈与契約は成立するのです。

また、民法550条では、「書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。」と定められています。そのため、仮に、贈与契約が口頭だけで行われていた場合には、各当事者が贈与契約を解除することが許されているのです。
これは、贈与契約が前述のとおり、口頭のやり取りで割と簡単に成立してしまうことから、やや慎重に欠く贈与の約束をしてしまう可能性があることを懸念したうえで規定されているルールです。

ただし、民法550条ただし書では、「履行の終わった部分については、この限りでない。」という文言も付されているため、書面によらない贈与であっても、履行が済んでしまった部分については、各当事者が贈与契約を解除することは許されません。

このように簡単にみえる贈与契約も、実は色々と複雑な要素を含んでいます。
贈与契約についてお悩みがある場合には、あらかじめ弁護士に相談しておくことがおすすめです。詳しくは弁護士法人ASKにご相談ください。


裁判例のご紹介(ふるさと納税返礼品交付請求事件・横浜地裁川崎支部令和7年1月21日判決)

さて、今回は、ふるさと納税寄付者と地方公共団体との間で成立した返礼品交付の贈与契約を解除することができるかどうか?が争われた裁判例をご紹介します。

*判例時報2026/02/15(No.2638号)72ページ以下参照*

どんな事案?

この事案は、川崎市内に居住するXさんが、宮崎県内の地方公共団体であるYに対して、XとYとの間には、YがXに対してふるさと納税の返礼品を交付する贈与契約が成立しており、Yが本件贈与契約に基づく返礼品の交付義務を履行しないため、Xは寄付額1万円の3割に相当する3000円の損害を被ったと主張して、損害賠償を求めた事案です。

何が起きた?

当事者について

Xさんは、川崎市内に居住している個人です。
他方、Yは、宮崎県内の地方公共団体(都農町)です。

Xさんによる寄付

令和3年10月、Yはふるさと納税による1万円の寄付金への返礼品として本件返礼品を交付する旨を情報提供していました。
そのような中、Xさんは、Yへの1万円の寄付を行うとともに、本件返礼品(宮崎牛赤身肉(切り落とし)計1.5Kg以上)の交付を申請し、申請内容がYに送信された旨のメールを受信しました。
また、Yは、本件寄付金の受領後、受領証明書を発行し、Xさんに対して郵送しました。

Yからのお詫びとお願い

ところが、Yは、令和3年12月頃、Xさんに対して、「Yふるさと納税返礼品について(お詫びとお願い)」「今後のお手続きについて(お願い)と題する2通の書面を郵送しました。
本件お詫び書面等には、Yが本件返礼品を発送できない事態を引き起こしてしまったこと、希望する対応方法として、返金か代替品の発送のいずれかを選択して手続をするよう依頼することなどが記載されていました。

Xさんの対応

しかし、Xさんは、本件お詫び書面等に対して、申請を行わず、Yからの返金も代替品の交付も受けませんでした。

訴えの提起

その後、Xさんは、Yに対して、XとYとの間には、YがXに対してふるさと納税の返礼品を交付する贈与契約が成立しており、Yが本件贈与契約に基づく返礼品の交付義務を履行しないため、Xは寄付額1万円の3割に相当する3000円の損害を被ったと主張して、損害賠償を求める訴えを提起しました。

Yの解除の意思表示

なお、Yは、この裁判の係属中に、Xさんに対して、本件返礼品の贈与契約を解除する旨の意思表示を行いました。

裁判で問題になったこと(争点)

当事者の主張

この裁判では、XさんがYとの間に贈与契約が成立していたと主張していたのに対して、Yは贈与契約の解除をそれぞれ主張していました。

争点

そこで、この裁判では、

  • 争点① XさんとYとの間に贈与契約が成立していたのかどうか
  • 争点② 本件贈与契約は書面によらない贈与として解除できるのかどうか

が問題(争点)になりました。


裁判所の判断

上記の争点について、裁判所はそれぞれ次のように判断しました。(確定)

争点裁判所の判断
①XさんとYとの間に贈与契約が成立していたのかどうか?○:XとYとの間では、YがXに対して本件返礼品を贈与する旨の贈与契約が成立していた
②本件贈与契約は書面によらない贈与として解除できるのかどうか?  ×:本件贈与契約は書面による贈与であり、本件贈与契約はYの解除の意思表示により終了したとはいえない

本判決の要旨

以下、判決の要旨をご紹介します。

争点①XさんとYとの間に贈与契約が成立していたのかどうか?

裁判所は次のとおり、Xさんが本件返礼品の送付の希望申請をしたことが「贈与を受ける意思表示」と、Yが本件サイト上で本件返礼品の情報を提供したことが「贈与の意思表示」とそれぞれ認定し、YがXさんに本件返礼品を贈与するとの意思が合致し、贈与契約が成立していたと認めました。

「(…)Xさんによる本件返礼品の送付の希望の申請は、本件返礼品を無償で取得する旨の、贈与を受ける意思表示であったと認められるところ、Yが、寄附者に送付の可否を連絡することなく本件返礼品を送付することを予定して、本件返礼品の情報を本件サイト上で提供していたことからすれば、Yによる本件返礼品の情報の提供は、本件サイト上で1万円を寄附して本件返礼品の送付を希望した寄附者に本件返礼品を無償で交付する旨の、贈与の意思表示であったと認めるのが相当であり、寄附者であるXさんの上記意思表示により、XさんとYとの間で、YがXさんに本件返礼品を贈与するとの意思が合致し、本件贈与契約が成立したと認めるのが相当である(…)。」

争点②本件贈与契約は書面によらない贈与として解除できるのかどうか?

裁判所は次のとおり、「本件お詫び書面」が、民法550条の「書面」に当たると判断し、本件贈与契約が書面によるものと認め、Yの解除の意思表示の効果を認めませんでした。

「(…)本件お詫び書面等は、YがXさんに対して、本件贈与契約が成立し、同契約に基づく本件返礼品の交付義務が生じたことを認めた上で、同義務が履行不能となったとの認識を示し、本件贈与契約について、本件寄附と同額の金銭の支払により合意解除するか、本件贈与契約の目的物の変更合意をするか、いずれかの合意をするよう申し込む旨の意思表示を記載したものと認められ、同書面送付後も、上記合意に至らない限り、本件贈与契約の契約関係が継続することを前提とした書面であると認められる。
そうすると、本件お詫び書面等は、贈与者であるYの慎重な意思決定に基づいて作成され、かつ、贈与の意思を確実に看取しうる書面ということができるので、民法550条の「書面」に当たると解するのが相当である。

(…)よって、本件贈与契約がYの解除の意思表示により終了したとは認められない。」

弁護士法人ASKにご相談ください

さて、今回は、ふるさと納税寄付者と地方公共団体との間で成立した返礼品交付の贈与契約を解除することができるかどうか?が争われた裁判例をご紹介しました。
この裁判では、ふるさと納税寄付者と地方公共団体との間で、贈与契約が成立していたことを前提に、地方公共団体側が寄付者に対して送付した、お詫び書面等が「書面」に当たる、として地方公共団体による贈与契約の解除は認められないと判断された点で注目されます。

ふるさと納税の場合には、返礼品として果物やお肉、お米などの天然物が届くケースがあり、天候の影響などで返礼品が送れなくなってしまうという事態も当然に想定されます。
この裁判の帰結は、今後の類似したトラブルにも大きな影響を与えるのではないでしょうか。

冒頭でもご紹介したとおり、贈与契約をめぐっては案外、複雑な問題が生じることがあります。
贈与契約についてお悩みがある場合には、ぜひ弁護士法人ASKにご相談ください。

弁護士法人ASKの弁護士相談・顧問契約をご希望の方はこちらまで