有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準とは?
Recently updated on 2025-04-04
期間の定めのある労働契約(有期労働契約)においては、契約の更新がなされ、契約が一定期間継続していたにもかかわらず、使用者側から、突然、「もう次は更新しませんので、契約期間の満了に伴って退職してください。」といった通告が行われることがあります。
いわゆる「雇止め」といわれる問題です。
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雇止めは、労働契約を打ち切られる労働者に特に大きな影響を与えることから、労使間の紛争に発展するケースが多く、トラブルも後をたちません。
そこで、厚労省は、労使間の紛争を未然に防止する観点から、労働基準法14条2項に基づき、「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」を定めています。
今回は、厚労省が策定している「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」に関して、概要をご紹介したいと思います。
なお、本解説記事は、厚労省が使用者向けに公開しているリーフレット(厚労省HP「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準について」)を参考にしています。

更新上限を定める場合等の理由の説明
使用者は、有期労働契約締結後、
- ①更新上限を新たに設ける場合
- ②更新上限を短縮する場合
には、更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)を新たに設ける、または短縮する理由を、当該労働者にあらかじめ説明しなければなりません。
あらかじめとは、更新新上限の新設または短縮をする前のタイミングにおいて、という意味です。
雇止めの予告
使用者は、有期労働契約を更新しない場合には、少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。
(*あらかじめ契約を更新しない旨が明示されている場合を除く。)
なお、雇止めの予告の対象となる有期労働契約は
- ①3回以上更新されている場合
- ②1年以下の契約期間の有期労働契約が更新または反復更新され、最初に有期労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
- ③1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合
です。
雇止めの理由の明示
使用者は、雇止めの予告後に、労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。
雇止めの後に、労働者が理由について証明書を請求した場合も、上記の場合と同様に、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。
なお、明示すべき「雇止めの理由」は、契約期間の満了とは別の理由とすることが必要であるとされています。
契約期間についての配慮
契約期間はできる限り長くしよう
使用者は、契約を1回以上更新し、かつ、1年を超えて継続して雇用している有期契約労働者との契約を更新しようとする場合には、契約の実態およびその労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするように努めなければなりません。
1回の契約期間には上限がある
なお、有期労働契約を締結する場合の1回の契約期間の長さは、労働基準法14条において定められているため、注意してください。
原則
原則として、労働契約の契約期間の上限は3年です。
有期労働契約については、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間において、労働契約を解除することはできません。
ただし、1回の契約期間が1年を超える有期労働契約(特例3を除く)を締結した労働者(特例1または特例2を除く)は、労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後は、使用者に申し出ることにより、 いつでも退職することができます。
特例1
高度の専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る)との間に締結される労働契約の場合には、1回の契約期間が3年超5年以内となる有期労働契約を締結することができます。
「専門的知識等を有する労働者」とは、以下のいずれかに該当する労働者をいいます。
- 博士の学位を有する者
- 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士または弁理士
- システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
- 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
- 大学卒で5年、短大・高専卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を有する農林水産業・鉱工業・機械・電気・土木・建築の技術者、システムエンジニア又はデザイナーで、年収が1,075万円以上の者
- システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタントで、年収が1,075万円以上の者
- 国等によって知識等が優れたものであると認定され、上記①から⑥までに掲げる者に 準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者
特例2
満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約の場合には、1回の契約期間が3年超5年以内となる有期労働契約を締結することができます。
特例3
このほか、一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約(有期の建設工事等)の場合には、1回の契約期間をその期間をすることができます。
以上をまとめると次のとおりとなります。
原則 | 通常の有期雇用契約 | 1回の契約期間の上限は3年 |
特例1 | 高度の専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約 | 1回の契約期間の上限は5年 |
特例2 | 満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約 | 1回の契約期間の上限は5年 |
特例3 | 一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約 | その期間 |
無期転換後の労働条件に関する説明
使用者は、無期転換後の労働条件を決定するにあたり、他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者及び無期雇用フルタイム労働者)とのバランスを考慮した事項について、当該労働者に説明するよう努めなければなりません。
労働条件明示ルール
なお、昨年3月に労働基準法施行規則と有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準が改正され、労働条件の明示事項等が変更されました。
本改正に伴うルールは令和6(2024)年4月1日から施行されています。
追加された明示事項は以下のとおりです。
なお、労働条件明示ルールについては、こちらのページで詳しく解説していますので、ぜひこちらもあわせてご覧ください。
弁護士にご相談ください
労働契約の締結時や更新時の労働条件の通知や雇用契約書の記載については、実は多くの使用者が軽視してしまっている傾向にあります。
しかし、労使間でどのような雇用契約が締結されているのかは、使用者側、労働者側いずれもが共通の認識を持っている必要があります。
この点を疎かにしてしまうと、後に労働者から、「本当はこんな労働条件ではなかったはずだ」「契約を締結する際に説明されていた条件とは違う」などの声があげられ、労使間にトラブルが生じるリスクが飛躍的に高くなります。
未然に紛争を防止するためには、まず労働条件の明示をすること、そして労働条件を変更するときには、その必要性と合理性があることを十分に説明することが大切です。
有期労働契約の締結、更新、雇止めなどについてお悩みがある場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
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