法律コラム

ツイッター(X)で名誉を毀損された!このアカウントは誰のもの?【旭川地裁令和6年7月25日判決】

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最近、ニュースでも著名人による名誉毀損などが問題になることが増えています。
名誉は、生命・身体と共にとても重大な保護法益であると考えられています。

そのため、これまでの最高裁判例では、名誉が侵害された場合には、名誉を侵害された人が、「人格権としての名誉権」に基づいて、現に行われている侵害行為を排除し、または将来生ずべき損害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる、とされています(最高裁昭和61年6月11日判決・北方ジャーナル事件)。

また、名誉を毀損した相手方に対して、損害賠償を求めたり、損害賠償に代えて(あるいは損害賠償に加えて)名誉回復のために適当な処分を求めたりすることも考えられます。「適当な処分」というのは、例えば、取消広告や訂正記事といったものです。

SNSを通じて、誰でも簡単に表現活動ができる時代だからこそ、改めて相手方の名誉について考えていく必要があります。
名誉毀損や損害賠償請求についてお悩みの場合には、弁護士に相談してみることもおすすめです。

裁判例のご紹介(損害賠償請求事件・旭川地裁令和6年7月25日判決)

さて、今回は、ツイッター上の名誉を毀損する投稿をめぐり、損害賠償請求がなされた事案をご紹介します。

*判例時報2026/01/15(No.2646号)130ページ以下参照*

どんな事案?

Xさんは、Yさんがツイッター(現在のX)に、本件記事を投稿したことで、Xさんの社会的評価を低下させ名誉権を侵害したと主張して、Yさんに対し、慰謝料などの支払いを求めた事案です。

何が起きた?

本件記事の投稿

令和3年4月26日午前0時10分、本件記事がツイッター上に投稿されました。
本件記事には、Xさんの顔写真等の画像も添付されていました。
なお、本件アカウント名は「名無し」であり、ユーザー情報には、Yさんが契約する携帯電話会社(KDDI)のYさんのメールアドレスが登録されていました。

IPアドレスについて

本件投稿の直近は、本件投稿前が同年4月25日午後11時34分頃であり、本件投稿後が同月26日午前7時5分頃でした。
これらのI Pアドレスは、いずれのログ情報記録時のIPアドレスともに、Yさんが契約するプロバイダから、Yさんが自宅に設置し使用するWi-Fi機器に割り当てられたものでした。
なお、同機器のWi-Fiを利用するにはID及びパスワードの入力が必要であり、Yさん方のWi-Fi機器の電波は、Yさん方の敷地外でも、屋外数十メートル程度の範囲で受信できる状況でした。

Yさん及びYさん方の状況

Yさん方は戸建て住宅で、近隣には戸建て住宅が立ち並んでおり、Yさんは、Yさんの母と二人で居住していました。
また、Yさん自身は会社員として、市内の工場で産業機械の組上げ、立上げ、検査等の業務を行っていました(Yさんの就業時間は平日午前8時から午後4時45分まで(午後0時から午後0時45分までは休憩時間))。

本件投稿と本件記事の内容などについて

▶︎本件投稿の背景

本件記事は、ユーチューバーが、インターネット上で、本件事件の加害者としてXさんの氏名や写真等を掲載したこと等を受けて投稿されたものでした。

▶︎本件事件

本件事件とは、令和3年3月頃、行方不明となっていた旭川市在住の女子中学生が、市内の公園で凍死した状態で発見されたという事件のことです。
同年4月頃、週刊誌が、ウェブ上で、本件事件の背景には同年代の少年Aらによる苛烈ないじめがあった旨を報じ、本件事件が全国的に注目されて、インターネット上では「A」らを特定しようとする動きが生じました。

▶︎Xさんの住所の特定

Xさんに本件事件の女子中学生との関わりはありませんでした。
しかし、本件投稿に対しては、同年4月28日、ツイッターの返信機能で、ツイッターのユーザーから、Xさんの住所が分かるか尋ねる投稿がなされました。
これに対して、本件記事の投稿者が、同日、その投稿に対し、Xさんの父親が運営する店舗の名称を挙げ、Xさんはその社長の息子であり、Xさん方は同店舗のすぐ隣であると回答しました。

訴えの提起

このような背景を踏まえ、Xさんは、Yさんに対して、Yさんがツイッターに本件記事を投稿したことで、Xさんの社会的評価を低下させ名誉権を侵害したと主張して、慰謝料などの支払いを求める訴えを提起しました。

問題になったこと(争点)

Yさんの反論

Xさんの訴えに対して、Yさんは、自身は本件投稿をしておらず、投稿元のアカウントはYさんが知らないものであるし、第三者が本件アカウントから、Yさん方のWi-Fi(ワイファイ)を利用して本件投稿をした可能性があるなどと主張していました。

争点

そこで、この裁判では、“本件記事の投稿がYさんによるものか否か?”が問題(争点)になりました。


裁判所の判断

この点について、裁判所は、本件の事情に照らすと、本件記事の投稿はYさんによるものであるとして、Yさんに対して慰謝料の支払いを命ずる判断を示しました。
以下、本判決の要旨をご紹介します。


判決の要旨

「(…)本件アカウントにはYさんのメールアドレス(キャリアメール)が登録されており、本件投稿は、Yさん方のWi-Fi機器のIPアドレスによってされていた。

 また、(…)ログ情報に本件IPアドレスが記録された時刻は、平日では、午後7時台から翌午前7時台までである。

 前記の時間帯は、Yさんの勤務時間外で通常在宅していると考えられる時間帯である。また、ログ情報には、平日夜間及び翌朝の2回本件IPアドレスが記録されている日が複数みられるところ、その時刻及び頻度を踏まえると、Yさん方外の者が、夜間から早朝にかけてのみ、Yさん方のWi-Fiの電波の届く範囲に頻繁に出入りするなどし、ログイン履歴が取得されるような操作をしていたとは考え難い。

 さらに、Yさんは、令和3年4月30日前後にゴールデンウィークの休日及び有給休暇を利用して新潟県外に旅行に出かけていることが認められるところ(…)、ログ情報には、同月29日午前5時7分頃から同年5月3日午前8時2分頃までの間は本件IPアドレスが記録されておらず、Yさんが旅行で不在にしている頃に合致する時期に、本件IPアドレスによるログ情報がない状況が生じていたと評価できる。

 以上のほか、Yさん方には、Yさんの母も居住しているものの、Yさんによってもあまりインターネットを利用していない(…)ということを踏まえると、本件投稿をしたのはYさんであると推認できる。」

弁護士法人ASKにご相談ください

さて、今回は、ツイッター上の名誉を毀損する投稿をめぐり、損害賠償請求がなされた事案をご紹介しました。

冒頭でも述べたとおり、名誉はとても重大な保護法益です。
あなたのつぶやきで、相手の名誉を侵害することもあります。
逆に、誰かのつぶやきで、自分の名誉が侵害されることも考えられます。

今回ご紹介した裁判例のように、名誉が侵害された場合には、相手方に対する損害賠償(慰謝料)の請求を含めて、適時・適切に対処を検討する必要があります。
名誉侵害や差止め、損害賠償請求などについてお悩みの場合には、弁護士法人ASKにご相談ください。

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