暴力団排除条項に基づく共済契約の解除は有効か?【広島高裁令和6年10月4日判決】
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多くの契約書では暴力団排除条項(いわゆる反社条項)が含まれています。
これまで家の賃貸借契約を結ぶときや何か大きな購入の契約を結ぶときに契約書をご覧になったことがある方であれば、「あ、なんかそんな条項も確かにあったかもな・・・」と思われるのではないでしょうか。
通常はさらさらっと読み飛ばしてしまう契約書にも、実はそれぞれの条項に意味があります。時として、自分にとって不利益な内容が書かれていることもあるのです。
また、契約書は後のトラブルを未然に防ぐ盾でもあるため、一つ一つ丁寧に見ていく必要があります。
契約書の作成や内容などについてお悩みがある場合には、ぜひ弁護士法人ASKにご相談ください。
裁判例のご紹介(保険金請求控訴事件・広島高裁令和6年10月4日判決)
さて、今回は、暴力団排除条項に基づく生命共済契約の解除が有効かどうか?が争われた裁判例をご紹介します。

*判例時報2025.11.15(No.2632号)94ページ以下参照*
どんな事案?
この事案は、暴力団構成員であるXさんの配偶者(妻)Aさんが、生命共済契約を締結していたところ、Aさんが死亡したとして、Yに対し、死亡共済金の支払いなどを求めた事案です。
何が起きた?
生命共済契約の締結
Aさん(Xさんの妻)は、自らを加入者として、生命共済事業を行うYとの間で生命共済契約を締結していました。
契約期間は、初年度は保障開始日(平成17年5月1日)から初めて迎える3月31日までとされていましたが、その後は、共済契約者からの申出や共済掛金の滞納による失効がない限り更新され、事業年度にあわせて毎年4月1日から翌年3月31日までとなっていました。
約款の改正
Aさんが当初の本件共済契約を締結した後、Yでは生命共済事業約款が改正され、
・共済金受取人などが暴力団員に該当する場合、共済契約を解除することができること
・解除した場合において、該当事由が生じた時から解除した時までに発生した支払事由については共済金を支払わないこと
などの規定(本件暴排条項)が付加されました(平成26年改訂)。
Aさんの死亡と共済金の請求
令和4年6月3日、Aさんが亡くなりました。
そして、同年7月6日、Xさんは、配偶者であるAさんが死亡したとして、Yに対して、本件共済契約に基づく共済金の支払いを求めました。
なお、Xさんは、Aさんの死亡時の前後を通じて、指定暴力団の構成員でした。
Yによる拒絶
これに対して、Yは、令和6年7月25日付で本件暴排条項に基づき、共済金受取人であるXさんが暴力団員であることを理由として、本件共済契約を解除する意思表示をした上、死亡共済金の支払請求を拒絶しました。
訴えの提起
そこで、Xさんは、Yに対し、死亡共済金の支払いなどを求める訴えを提起しました。

裁判で問題になったこと(争点)
この裁判では、
①本件暴排条項が本件共済契約に適用されるのかどうか?
②Yが本件暴排条項に基づいて本件共済契約を解除し、共済金の支払を拒絶することが信義則違反または権利濫用となるかどうか?
が問題(争点)になりました。
裁判所の判断
これらの争点について、裁判所は以下のとおり判断しました。
| 争点 | 裁判所の判断 |
|---|---|
| ①本件暴排条項が本件共済契約に適用されるのかどうか? | 適用される |
| ②Yが本件暴排条項に基づいて本件共済契約を解除し、共済金の支払を拒絶することが信義則違反または権利濫用となるかどうか? | 共済契約の解除・共済金の支払拒絶は本件暴排条項に基づくものであり、信義則違反や権利濫用も認められない |
判決の要旨
なぜ裁判所はこのような判断をしたのでしょうか?
以下では、本判決の要旨をご紹介します。
争点①(本件暴排条項が本件共済契約に適用されるのかどうか?)について
▶︎本件暴排条項は本件共済契約にも適用される
「(…)本件共済契約の共済期間は基本的に1年であり,毎年4月1日に更新されるものであるから,本件解除は,令和4年4月1日に更新された本件共済契約を対象とするものということになる。そうすると,Yが解除した本件共済契約には,平成26年約款で付加された本件暴排条項が適用されることになる。」
▶︎遡及的な適用は問題にならない
「これに対し,Xさんは,(…)本件暴排条項のような不利益条項を遡及的に適用することは許されない旨を主張する。
しかしながら,契約期間の定めのない預金契約等とは異なり,本件共済契約は前記のとおり1年ごとに更新されるものであり,平成26年約款で付加された本件暴排条項の適用を前提に更新されたものであるから,遡及的適用は問題とならず,主張自体失当である。」
▶︎暴排条項違反は解除事由としても重大な事由に当たる
「また,Xさんが当審において,本件暴排条項は保険法57条3号に反するから,同法65条2号により無効となる旨主張するが,同法57条3号は,生命保険契約の解除事由として,「保険者の保険契約者,被保険者又は保険金受取人に対する信頼を損ない,当該生命保険契約の存続を困難とする重大な事由」を生命保険契約の解除事由として定めているところ,死亡共済金の受取人が反社会的勢力に属するという事実は,正にYのWあるいはXさんに対する信頼を損ない,生命共済契約の存続を困難とさせる重大な事由ということができる。そうすると,本件暴排条項が保険法57条3号に反する特約に当たるものと認めることはできない(…)。」
争点②(Yが本件暴排条項に基づいて本件共済契約を解除し、共済金の支払を拒絶することが信義則違反または権利濫用となるかどうか?)について
「Xさんは,(…)Yが,本件暴排条項に基づき,本件共済契約を解除し,共済金の支払を拒絶することが信義則違反又は権利濫用となる旨を主張する。
しかしながら,(…)Yは,本件暴排条項に基づいて,本件共済契約を解除し,共済金の支払を拒絶したものであって,本件記録を子細に検討しても,Yによる前記の行為が,信義則に違反し,又は権利濫用に当たると評価すべき事情は認めるに足りない。」
結論
「以上によれば,Yによる本件解除は有効であり,Xさんの本件共済契約に基づく死亡共済金の支払請求を拒絶することが許容されるというべきであるから,Xさんが,Yに対して,死亡共済金の支払請求をすることはできない。」
弁護士法人ASKにご相談ください
さて、今回は暴力団排除条項に基づく生命共済契約の解除が有効かどうか?が争われた裁判例をご紹介しました。
この事案では、生命共済契約の締結の後に、生命共済事業約款が改訂され、暴排条項が付加されていたことから、暴排条項の適用の有無や同条項適用による共済契約の解除の可否などが問題になっていました。
契約は当初に締結した後に、その契約の内容が変更されたり、契約に付随する約款などの細かい部分が改訂されることがあります。
特に自分が一般消費者側で、相手方が事業者の場合には、何か改訂の通知をされていても読み飛ばしてしまうことが多いかもしれません。
しかし、契約書の内容は一つひとつに意味があり、常に自分ごととして捉えておく必要があります。
契約書の内容や作成などについてお悩みがある場合には、ぜひ弁護士法人ASKにご相談ください。
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