フリーランスの就業環境整備に向けた検討会報告書が出されました【フリーランス保護法施行】
昨年、フリーランスの方が安心して業務を遂行できるような環境を整えるべく、フリーランス保護法が(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が成立し、令和6年11月1日から施行されることが決まっています。
もっとも、先日(令和6年10月18日)に公表された「フリーランス取引の状況についての実態調査(法施行前の状況調査)結果」(公正取引委員会 厚労省)によると、そもそもフリーランス保護法の内容を知らないという回答の割合は、委託者で54.5%、フリーランスで76.3%にも及んでいます。
フリーランス保護法とは?という方は、ぜひこちらをご覧ください。
さて、フリーランス保護法では、いくつかの点に関して、具体的には下位法令において定めることとなっていました。
同法成立後、厚労省の「特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会」では、 “結局、どのような内容とするべきなのか?“という点に関して、令和5年9月から、9回にわたり検討会が行われてきました。
今回は、そんな検討会において行われた議論の結果が報告書として取りまとめられた(厚労省HP「「特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会」の報告書を公表します」参照)から、簡単に報告書の内容をご紹介します。
本検討会報告書の趣旨
フリーランス保護法の第3章では、特定受託業務委託事業者が整えなければならない特定受託従業者の就業環境の整備について定めています。
具体的には、特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対して行う業務委託に関して、募集情報の的確な表示、妊娠。出産若しくは育児または介護に対する配慮、ハラスメント対策にかかる体制整備及び中途解除等の事前予告・理由開示等を講じることとされています。
そして、その具体的な内容については、フリーランス保護法(以下「法」といいます。)の委任に基づき、政令、省令、告示(下位法令)において定めることとされています。
そこで、下位法令で定めるとされた特定受託事業者の就業環境の整備に関する具体的内容について検討するため、厚労省の「特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会」(座長:鎌田耕一東洋大学名誉教授)において、令和5年9月から検討が重ねられてきました。
この検討会報告書は、同検討会において行われた議論の結果が取りまとめられています。
下位法令において規定する事項及び関連事項について
募集情報の的確な表示(法12条)
募集情報の低確な表示とは
特定業務委託事業者は、広告等により、業務委託にかかる特定受託事業者の募集に関する情報を提供する場合は、当該情報について、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければなりません。
(募集情報の的確な表示)
第十二条
特定業務委託事業者は、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法(次項において「広告等」という。)により、その行う業務委託に係る特定受託事業者の募集に関する情報(業務の内容その他の就業に関する事項として政令で定める事項に係るものに限る。)を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。
2 特定業務委託事業者は、広告等により前項の情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない。
的確表示の対象となる募集情報の提供方法とは?
本検討会報告書では、法12条1項の厚生労働省令で定める方法(的確表示の対象となる募集情報の提供方法)とは、以下の内容とすることが適当であるとされています。
- 書面の交付の方法
- ファクシミリを利用してする送信の方法
- 電子メールその他のその受信する者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法2条1号に規定する電気通信をいう。「電子メール等」)の送信の方法
- 著作権法2条1項8号に規定する放送、同項9号の2に規定する有線放送又は同項9号の5イに規定する自動公衆送信装置その他電子計算機と電気通信回線を接続してする方法その他これらに類する方法
的確表示義務の対象となる募集情報の事項とは?
本検討会報告書では、法12条1項の政令で定める事項(的確表示義務の対象となる募集情報の事項)とは、以下の内容とすることが適当であるとされています。
①業務の内容
②業務に従事する場所、期間及び時間に関する事項
③報酬に関する事項
④契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む)に関する事項
⑤特定受託事業者の募集を行う者に関する事項
育児介護等への配慮(法13条)
妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮とは
特定業務委託事業者は、一定の期間以上の継続的な業務委託の相手方である特定受託事業者からの申出に応じて、特定業務受託事業者が妊娠・出産・育児、介護と両立しつつ業務を行うことができるように必要な配慮をしなければなりません。
必要な配慮としては、妊娠健診の受診のための時間を確保することや就業時間を短縮すること、育児介護等と両立可能な就業日・時間とすることなどが想定されています。
(妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮)
第十三条
特定業務委託事業者は、その行う業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る。以下この条及び第十六条第一項において「継続的業務委託」という。)の相手方である特定受託事業者からの申出に応じて、当該特定受託事業者(当該特定受託事業者が第二条第一項第二号に掲げる法人である場合にあっては、その代表者)が妊娠、出産若しくは育児又は介護(以下この条において「育児介護等」という。)と両立しつつ当該継続的業務委託に係る業務に従事することができるよう、その者の育児介護等の状況に応じた必要な配慮をしなければならない。
2 特定業務委託事業者は、その行う継続的業務委託以外の業務委託の相手方である特定受託事業者からの申出に応じて、当該特定受託事業者(当該特定受託事業者が第二条第一項第二号に掲げる法人である場合にあっては、その代表者)が育児介護等と両立しつつ当該業務委託に係る業務に従事することができるよう、その者の育児介護等の状況に応じた必要な配慮をするよう努めなければならない。
継続的業務委託の期間とは?
本検討会報告書では、法13条1項の政令で定める期間(継続的業務委託の期間)は、6か月とすることが適当であるとされています。
なお、同報告書において、この「6か月」という期間の考え方については、以下の内容とすることが適当であるとされています。
①継続的業務委託の期間の算定に当たっては、業務委託に係る契約を締結した日を始期、業務委託に係る業務が終了する日を終期とする。
②業務委託に係る給付に関する基本的な事項についての契約(基本契約)を締結し、基本契約に基づいて業務委託を行う場合においては、継続的業務委託の期間の算定は、基本契約を締結した日を始期、基本契約が終了する日を終期とする。
③契約の更新により継続して行うこととなる業務委託の期間については、最初の業務委託又は基本契約の始期から最後の業務委託又は基本契約の終期までを算定する。
*なお、「契約の更新により継続して行うこととなる」と判断されるためには
(ア)契約の当事者が同一であり、その給付又は役務の提供の内容が少なくとも一定程度の同一性を有し
(イ)前の業務委託に係る契約又は基本契約が終了した日の翌日から、次の業務委託に係る契約又は基本契約を締結した日の前日までの期間の日数が1か月未満であること
という2つの要件を満たす必要がある。
④期間の定めがない業務委託又は基本契約は、係属的業務委託に含まれるものとする。
ハラスメント対策に関する体制の整備等(法14条)
ハラスメント対策に関する体制の整備等とは
特定業務委託事業者は、業務委託の相手方である特定受託業務従業者に対し、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、パワーハラスメント行為により、就業環境を害することがないよう、特定受託業務従業者からの相談に応じ、適切に対応するための必要な体制の整備等の措置を講じなければなりません(法14条1項)。
具体的な措置としては、
①ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業員に対してその方針を周知、啓発すること
②ハラスメントを受けた者からの相談に適切に対応するために必要な体制を整備すること
③ハラスメントが発生した場合の事後の迅速かつ適切な対応をすること
などが想定されています。
また、特定業務委託事業者は、特定受託業務従事者がハラスメントの相談を行ったこと、特定業務委託事業者によるハラスメント相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、契約を解除するなどの不利益な取り扱いをしてはなりません(法14条2項)。
(業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等)
第十四条
特定業務委託事業者は、その行う業務委託に係る特定受託業務従事者に対し当該業務委託に関して行われる次の各号に規定する言動により、当該各号に掲げる状況に至ることのないよう、その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。
一 性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応によりその者(その者が第二条第一項第二号に掲げる法人の代表者である場合にあっては、当該法人)に係る業務委託の条件について不利益を与え、又は性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境を害すること。
二 特定受託業務従事者の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動によりその者の就業環境を害すること。
三 取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものにより特定受託業務従事者の就業環境を害すること。
2 特定業務委託事業者は、特定受託業務従事者が前項の相談を行ったこと又は特定業務委託事業者による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、その者(その者が第二条第一項第二号に掲げる法人の代表者である場合にあっては、当該法人)に対し、業務委託に係る契約の解除その他の不利益な取扱いをしてはならない。
妊娠又は出産等に関するハラスメントとなる言動の対象事由とは?
本検討会報告書では、法14条1項2号の厚生労働省令で定める事項(妊娠又は出産等に関するハラスメントとなる言動の対象事由)は、以下の内容とすることが適当であるとされています。
①妊娠したこと
②出産したこと
③妊娠又は出産に起因する症状により業務委託に係る業務を行えないこと若しくは行えなかったこと又は当該業務の能率が低下したこと
④妊娠又は出産に関して法13条1項若しくは2項の規定による配慮の申出をし、又はこれらの規定による配慮を受けたこと
特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な指針(法15条)
特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な指針とは
法15錠では、募集情報の的確な表示(法12条)、妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮(法13条)、業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等(法14条)に関して、特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な事項は、厚労大臣が、「必要な指針を公表」するものとされています。
(指針)
第十五条
厚生労働大臣は、前三条に定める事項に関し、特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な指針を公表するものとする。
特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な事項
本検討会報告書では、特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な事項について、「別紙」の内容とすることが適当であるとしています。
別紙については、長くなりますので、こちらの8ページ以下をご覧ください。
解除等の予告等(法16条)
契約解除の事前の予告義務(法16条1項)
事前の予告義務とは
特定業務委託事業者は、継続的業務委託に関する契約を中途解除等しようとする場合には、予告が困難な場合を除き、特定受託事業者に対して、少なくとも30日前までに、その予告をしなければなりません(法16条1項)。
予告が困難な場合とは、たとえば、天災等により業務委託の実施が困難になったため契約を解除する場合や、特定受託事業者の責めに帰すべき事由により契約を解除する場合などが想定されています。
(解除等の予告)
第十六条
特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。次項において同じ。)をしようとする場合には、当該契約の相手方である特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、少なくとも三十日前までに、その予告をしなければならない。ただし、災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。
2 (略)
事前予告の方法とは?
本検討会報告書は、法16条1項の厚生労働省令で定める予告の方法(契約解除の事前予告の方法)とは、以下の内容とすることが適当であるとしています。
①書面を交付する方法
②ファクシミリを利用してする送信の方法
③電子メール等の送信の方法(記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)
なお、
②による予告は、特定受託事業者の使用に係るファクシミリ装置により受信した時に、
③による予告は、特定受託事業者の使用に係る通信端末機器等により受信した時に、
それぞれ到達したものとみなす、とされています。
事前予告の例外事由とは?
本検討会報告書は、法16条1項の厚生労働省令で定める場合(事前予告の例外事由)とは、以下の内容とすることが適当であるとしています。
①災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合
②他の事業者から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、当該業務委託に係る業務(元委託業務)の全部又は一部を特定受託事業者に再委託した場合であって、当該元委託業務に係る契約の全部又は一部が解除され、当該特定受託事業者に再委託した業務(再委託業務)の大部分が不要となった場合その他の直ちに当該再委託業務に係る契約の解除(契約の不更新の場合を含む)をすることが必要であると認められる場合
③基本契約に基づいて業務委託を行う場合又は契約の更新により継続して業務委託を行うこととなる場合であって、契約期間が短期間(30日間以下)である一の契約(個別契約)を解除しようとする場合
④特定受託事業者の責に帰すべき事由により直ちに契約を解除することが必要であると認められる場合
⑤基本契約を締結している場合であって、特定受託事業者の事情により、相当な期間、個別契約が締結されていない場合
契約解除の理由開示義務(法16条2項)
理由開示義務とは
また、特定業務事業者は、特定受託事業者が、契約解除を予告された日から契約が満了する日までの間に契約解除の理由の開示を請求した場合には、特定受託事業者に対して、遅滞なく理由を通知しなければなりません(法16条2項)。
(解除等の予告)
第十六条
(略)
2 特定受託事業者が、前項の予告がされた日から同項の契約が満了する日までの間において、契約の解除の理由の開示を特定業務委託事業者に請求した場合には、当該特定業務委託事業者は、当該特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なくこれを開示しなければならない。ただし、第三者の利益を害するおそれがある場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。
理由開示の方法とは?
本検討会報告書は、法16条2項の厚生労働省令で定める開示の方法(理由開示の方法)とは、以下の内容とすることが適当であるとしています。
①書面を交付する方法
②ファクシミリを利用してする送信の方法
③電子メール等の送信の方法(記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)
なお、
②による予告は、特定受託事業者の使用に係るファクシミリ装置により受信した時に、
③による予告は、特定受託事業者の使用に係る通信端末機器等により受信した時に、
それぞれ到達したものとみなす、とされています。
理由開示の例外事由とは?
本検討会報告書は、法16条2項の厚生労働省令で定める場合(理由開示の例外事由)とは、以下の内容とすることが適当であるとしています。
①第三者の利益を害するおそれがある場合
②他の法令に違反することとなる場合
その他
上記の他にも、本検討会報告書は、法16条に定める事項については、特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な指針の対象となっていないこと(法15条参照)を踏まえて、以下の内容について解釈通達やリーフレット等において記載し、周知を行うことが適当であるとしています。
①契約の解除とは
本検討会報告書では、契約解除(法16条)の考え方について、
・特定業務委託事業者と特定受託事業者との間で一定の事由がある場合に事前予告なく解除することができると定めていた場合であっても直ちに事前予告が不要となるものではなく、法に規定する事前予告の例外事由に該当するか否か判断が必要となることとする
とされています。
また、
・特定業務委託事業者と特定受託事業者との間の合意に基づく場合には、「契約の解除」には当たらないと解されるが、当該合意に係る特定受託事業者の意思表示が自由な意思に基づくものであったかどうかについて慎重に判断することが必要となることとする
とされています。
②契約の解除をしようとする場合
本検討会報告書では、法16条に定める「契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。)をしようとする場合」について、
・本条が、特定業務委託事業者が「契約の解除をしようとする場合」と同様のものとして「契約の不更新をしようとする場合」に30日前の予告を義務付けていることを踏まえれば、不更新をしようとする意思を持って「契約を更新しない」状態となる場合にのみ予告を義務付けることとし、以下の通りに整理することとする
とされています。
「契約の不更新をしようとする場合」に該当すると考えられる具体例
そして、「契約の不更新をしようとする場合」に該当すると考えられる具体例としては、以下の内容が挙げられています。
(ア)切れ目なく契約の更新がなされている又はなされることが想定される場合であって、当該契約を更新しない場合
(イ)継続的な業務委託であって、特定業務委託事業者が特定受託事業者との取引を停止するなど次の契約申込みを行わない場合
「契約の不更新をしようとする場合」に該当しないと考えられる具体例
また、「契約の不更新をしようとする場合」に該当しないと考えられる具体例としては、以下の内容が挙げられています。
(ウ)業務委託の性質上一回限りであることが明らかである場合
(エ)断続的な業務委託であって、特定業務委託事業者が次の契約申込みを行うことができるかが明らかではない場合
*なお、上記(エ)の場合は、次の契約申込みを行わないことが明らかになった時点でその旨を伝達することが望ましいとされています。
③特定受託事業者の責めに帰すべき事由とは(事前予告の例外事由)
先ほど述べたとおり、契約解除の事前予告の例外事由として、本検討会報告書では「特定受託事業者の責に帰すべき事由により直ちに契約を解除することが必要であると認められる場合」が挙げられています。
この「特定受託事業者の責に帰すべき事由」の解釈について、本検討会報告書は、
・発注者の一方的な事情により例外事由が濫用されてしまうことを防ぐため、労基法20条の「責めに帰すべき事由」の考え方と同等程度に、限定的に解することとし、その場合の考え方は以下の通りに整理する
としています。
以下、この整理された内容について記載します。
考え方
まず、「特定受託事業者の責に帰すべき事由」の考え方については、
・「特定受託事業者の責に帰すべき事由」とは、特定受託事業者の故意、過失又はこれとどうしすべき事由であるが、判定に当たっては、業務委託に係る契約の内容等を考慮の上、総合的に判断すべきであり、「特定受託事業者の責めに期すべき事由」が法16条の保護を与える必要のない程度に重大又は悪質なものであり、従って、特定業務委託事業者に特定受託事業者に対し30日前に解除の予告をさせることが当該事由と比較して均衡を失するようなものに限る。
とされています。
「特定受託事業者の責に帰すべき事由」の具体例
また、「特定受託事業者の責に帰すべき事由」とすべき事例としては、次のような例が挙げられています。
- 原則として極めて軽微なものを除き、業務委託に関連して盗取、横領、傷害等刑法犯等に該当する行為のあった場合、また一般的にみて「極めて軽微」な事案であっても、特定業務委託事業者があらかじめ不詳事件の防止について諸種の手段を講じていたことが客観的に認められ、しかもなお特定受託事業者が継続的に又は断続的に盗取、横領、傷害等の刑法犯等又はこれに類する行為を行った場合、あるいは業務委託と関連なく盗取、横領、傷害等の刑法犯等に該当する行為があった場合であっても、それが著しく特定業務委託事業者の名誉もしくは信用を失墜するもの、取引関係に悪影響を与えるもの又は両者間の信頼関係を喪失させるものと認められる場合
- 賭博、風紀紊乱等により業務委託に係る契約上協力して業務を遂行する者等に悪影響を及ぼす場合。また、これらの行為が業務委託と関連しない場合であっても、それが著しく特定業務委託事業者の名誉若しくは信用を失墜するもの、取引関係に悪影響を与えるもの又は両者間の信頼関係を喪失させるものと認められる場合
- 業務委託の際にその委託をする条件の要素となるような経歴・能力を詐称した場合及び業務委託の際、特定業務委託事業者の行う調査に対し、業務いたくをしない要因となるような経歴・能力を詐称した場合
- 特定受託事業者が、業務委託に係る契約に定められた給付及び役務を合理的な理由なく全く又はほとんど提供しない場合
- 特定受託事業者が、契約に定める業務内容から著しく逸脱した悪質な行為を故意に行い、当該行為の改善を求めても全く改善が見られない場合
厚生労働大臣の権限の委任(法23条)
厚労大臣からの権限の委任
法23条では、同法に定める「厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる」とされています。
(厚生労働大臣の権限の委任)
第二十三条
この法律に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。
委任できる内容とは
本検討会報告書は、法23条に定める「厚生労働大臣の権限」とは、以下の内容とすることが適当であるとしています。
・法17条(申出等)2項
・法18条(勧告)
・法19条(命令等)
・法20条(報告及び検査)1項及び2項
・法22条(指導及び助言)
に規定する厚生労働大臣の権限は、厚生労働大臣が全国的に重要であると認めた事案に係るものを除き、特定業務委託事業者の事業所の所在地を管轄する都道府県労働局長が行うものとする。
(申出等)
第十七条
特定業務委託事業者から業務委託を受け、又は受けようとする特定受託事業者は、この章の規定に違反する事実がある場合には、厚生労働大臣に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
2 厚生労働大臣は、前項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。
3 (略)
(勧告)
第十八条
厚生労働大臣は、特定業務委託事業者が第十二条、第十四条、第十六条又は前条第三項において準用する第六条第三項の規定に違反していると認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、その違反を是正し、又は防止するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
(命令等)
第十九条
厚生労働大臣は、前条の規定による勧告(第十四条に係るものを除く。)を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、当該勧告を受けた者に対し、当該勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
2 厚生労働大臣は、前項の規定による命令をした場合には、その旨を公表することができる。
3 厚生労働大臣は、前条の規定による勧告(第十四条に係るものに限る。)を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、その旨を公表することができる。
(報告及び検査)
第二十条
厚生労働大臣は、第十八条(第十四条に係る部分を除く。)及び前条第一項の規定の施行に必要な限度において、特定業務委託事業者、特定受託事業者その他の関係者に対し、業務委託に関し報告をさせ、又はその職員に、これらの者の事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 厚生労働大臣は、第十八条(第十四条に係る部分に限る。)及び前条第三項の規定の施行に必要な限度において、特定業務委託事業者に対し、業務委託に関し報告を求めることができる。
3 (略)
(指導及び助言)
第二十二条
公正取引委員会及び中小企業庁長官並びに厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、業務委託事業者に対し、指導及び助言をすることができる。
まとめ
本検討会報告書は、特定受託事業者の就業環境の整備に関して、フリーランス保護法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の委任に基づき下位法令において定めることとされている事項について、検討会において検討されてきた内容が報告されたものです。
今後は、厚生労働省が、この報告書の内容を受けて、必要な下位法令等を定めることが期待されています。
今回ご紹介した内容は、あくまでも検討会の検討結果ではありますが、下位法令等が定められる上では、大きく影響を与えるものであると考えられます。
したがって、フリーランス保護法の適用を受ける業務委託契約を締結する場合には、本検討会の報告書の内容も意識しながら、契約内容を考慮することが大切です。
弁護士にご相談ください
フリーランス保護法の成立により、今後は、業務委託契約を締結する際に、フリーランス保護法が適用されるか否か、適用がある場合には法律の規定に違反していないかどうかをチェックする必要があります。
また、既存の業務委託契約書の内容についても、改めて見直し、フリーランス保護法に適合しているかどうかを確認しておくことが重要です。
フリーランスとの関係についてお悩みがある方、偽装フリーランスに疑わないか心配がある方、フリーランス保護法の内容について知りたい方は、ぜひ弁護士にご相談ください。