労働問題

【判例解説】コンビニのフランチャイズ加盟者は労組法上の「労働者」に当たるのか【ファミリーマート編】

令和4(2022)年12月、コンビニエンスストアのフランチャイズ・チェーンを運営する会社との間で加盟店基本契約を締結して店舗を経営する加盟者が、労働組合法上の労働者に該当するか否かが争われたセブンイレブンジャパン事件の東京高裁判決がありました(令和5年7月12日確定)。

セブンイレブンジャパン事件は、コンビニエンスストアを経営する加盟者の労組法上の労働者性をめぐる中央労働委員会の命令に対して取消訴訟が提起された初めての例であったこと、また、フランチャイズ契約を締結した加盟者は「労働者」に該当しないという判断を示すものであったことなどから、世間の注目を集めました。

セブンイレブンジャパン事件の解説はこちら

さて、今回はファミリーマートを背景に、コンビニ加盟店主らの労働者性と断交拒否の不当労働行為該当性が争われた事件を紹介します。
セブンイレブンジャパン事件との相違にも着目しながら、改めてフランチャイズ契約の加盟者の「労働者」性について考えてみましょう。

ファミリーマート事件(東京地裁 令和5.5.25判決)

事案の概要

A組合について

A組合は、コンビニエンスストアのフランチャイズ・チェーンを運営するB社との間でフランチャイズ契約を締結した加盟者が中心となり、平成24年8月に結成された団体です。
同年9月から10月当時、A組合の組合員は13名おり、うちB社との間でフランチャイズ契約を締結した加盟者が10名、B社とフランチャイズ契約を締結した法人の加盟者の代表者が2名、その配偶者であり店のマネージャーを務める者1名で構成されていました。
加盟者組合員は、いずれも加盟店舗の店長を務めており、個人加盟者のうち8名は「2FC契約」(店舗物件・設備をB社が調達して加盟者に使用貸借される契約)を締結していました。

B社による団交拒否

平成24年9月及び10月、A組合はB社に対して、「加盟者が再契約を希望する際にB社が可否を決定する具体的な判断基準について」を議題とする団体交渉を申し入れたものの、A組合とB社との間で各団体交渉申入れにかかる団体交渉は開催されませんでした(本件団交拒否)。

団交拒否に対する措置

A組合は、本件団交拒否は、労働組合法7条2号の不当労働行為に該当すると主張して平成24年12月に東京都労働委員会(都労委)に対して、救済申立てを行ったところ、都労委は、平成27年3月17日付けで救済命令を発しました。
これに対して、B社が中央労働委員会(中労委)に対して再審査の申立てを行ったところ、中労委は、加盟者は労組法上の労働者ではないという理由によって本件団交拒否は不当労働行為に当たらないと判断し、都労委の命令を取り消す旨の命令を発しました(本件命令)。

訴えの提起

そこで、A組合は、中労委が属する国に対して、本件命令の取消を求める訴えを提起しました。

争点

本件の争点は、本件団交拒否が労働組合法(労組法)7条2号所定の不当労働行為に当たるか否かですが、その前提として、A組合の組合員が労働組合法上の労働者に該当するか否かが問題となりました。

労働組合法7条2号
第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。

本判決の要旨

判断枠組み

労組法上の労働者とは

労組法上の労働者は、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」とされる(同法3条)。
労働基準法9条や労働契約法2条1項が「賃金を支払われる者」としているのに対し、労組法3条が「賃金」のみならず「給料その他これに準ずる収入」としていること、労働基準法9条や労働契約法2条1項にある「使用され」との文言が労組法3条にないこと、及び、同法の目的が、労働者が、使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより、労働者の地位を向上させることであって(同法1条)、労働基準法9条や労働契約法2条1項の労働者とは異なる概念であり、使用者との間において使用従属関係にあるといえることは必須ではないと解される。

判断基準

上記の労組法の目的を踏まえると、同法上の労働者には、自らの労働力を提供して対価を得て生活するがゆえに、相手方との個別の交渉において交渉力に格差が生じ、労働組合を組織し集団的な交渉による保護が図られるべきであるといえる者がこれに含まれると解される。
このような観点から、労組法上の労働者に当たるかは、
①労務供給者が相手方の事業遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されているか(事業組織への組入れ)
②契約の締結の態様から、労働条件や提供する労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか(契約内容の一方的・定型的決定)
③労務供給者の報酬が労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性格を有するか(報酬の労務対価性)
④労務供給者が、相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係があるか(業務の依頼に応ずべき関係ないし諾否の自由)
⑤労務供給者が、広い意味での指揮監督下において労務を提供していたか、一定の時間的場所的拘束を受けていたか

積極的要素として考慮し、かつ、
⑥労務供給者が当該事業のための相応の設備、機会、資金等を保有し又は他人を使用していることなどにより、その業務につき自己の才覚で利得する機会を恒常的に有するかなど事業者性が顕著であるか(顕著な事業者性)
消極的要素として考慮すべきである(最一小判昭51・5・6(CBC管弦楽団事件)、最三小判平23・4・12(新国立劇場運営財団事件)、最三小判平23・4・12(INAXメンテナンス事件)、最三小判平24・2・21(ビクターサービスエンジニアリング事件)参照)。

本件の検討

①事業組織への組入れ

➣本件フランチャイズ契約の基本的な枠組み
本件フランチャイズ契約は、B社が、加盟者に対し、Zシステムを提供し、Z店の経営を行うことを許諾し、加盟者が、B社に対し、その対価として、加盟者が経営する加盟店舗の売上総利益の一定割合を本部フィーとして支払うという契約である。

➣本件フランチャイズ契約における加盟者及び法人加盟者代表者の労働力の位置付け
本件フランチャイズ契約は、当事者の互いの権利義務の内容、及び互いの収益の仕組みからすれば、加盟者又は法人加盟者代表者自身が店長を務めて店舗運営業務に従事することが必須であるとはいえないから、本件フランチャイズ契約は、B社が加盟者又は法人加盟者代表者の労働力を確保する目的で締結されているとまではいえない。

また、加盟者又は法人加盟者代表者が店長(加盟者店長)となっている場合、第三者に対する外観及び専属性において、B社の事業組織の一部となっていると評価できる部分もあるが、加盟者店長がいつ何時間どのような内容の店舗運営業務に従事するかは加盟者店長が自ら決定しており(このことは、加盟者組合員にも当てはまる。)、B社において、加盟者又は法人加盟者代表者の労働力を管理する権限を有するとはいえず、管理している実態があるともいえない。

➣小括
これらのことから、本件フランチャイズ契約においては、加盟者又は法人加盟者代表者が、B社の事業遂行に不可欠ないし枢要な労働力としてB社の組織内に位置付けされ、確保されていると認めることはできない。
そして、このことは、B社と加盟者組合員との間に、労働力の利用をめぐり団体交渉によって問題を解決すべき関係があるとまではいえないことを示している。

②契約内容の一方的・定型的決定

本件フランチャイズ契約の内容は、B社により、契約書により定型的に決定されており、加盟者ごとの特約事項は認められていない。
以上から、本件フランチャイズ契約の内容は、B社により一方的かつ定型的に決定されているといえる。

③報酬の労務対価性

➣報酬の約束がないこと
本件フランチャイズ契約は、B社が、加盟者に対し、Zシステムによる加盟店舗の経営を許諾し、Zシステムを提供して加盟者の加盟店舗の経営を支援し、加盟者が、その対価として本部フィーを支払う契約であるから、加盟者が本件契約上の義務を履行する対価として、B社が加盟者に対し報酬を支払う約束はしておらず、加盟者がB社から報酬を受け取ることは予定されていない。

➣本件契約により加盟者が受ける金員の性格
本件フランチャイズ契約により加盟者がB社から受け取る金員は、引出金、配分金、24時間営業奨励金及び最低保証金である。

➣小括
以上のとおり、本件フランチャイズ契約においては、そもそも会社が加盟者に報酬を支払う約束がなく、会社から加盟者に対して支払われる金員は、いずれも、加盟者又は法人加盟者代表者が店長となっているか、店舗運営業務にどれだけ従事したかとは直接関係はなく、加盟者又は法人加盟者代表者の加盟店舗における就業による出来高、業務量又は就業時間によって算出されるものではなく、加盟者又は法人加盟者代表者の労務供給の対価とはいえないものであるから、報酬に労務対価性があるとはいえない。

④業務の依頼に応ずべき関係ないし諾否の自由

➣個々の業務依頼がなく検討の前提を欠くこと

加盟者とB社との関係は、業務の依頼に応ずべき関係ないし諾否の自由の要素の検討の前提である個々の業務の依頼が欠けているため、加盟者がB社の個々の業務の依頼に応ずべき関係があるとは認められない。

➣本件フランチャイズ契約における加盟者に対する義務付け

≪Zシステムについて≫
A組合は、本件フランチャイズ契約上、加盟者は、Zシステムに従って店舗運営に従事することが定められているが、B社が加盟者に提供するものであり、加盟者に対し、これらに従うよう義務付けるといった類いのものではない。

≪加盟者のその他の義務について≫
本件フランチャイズ契約によれば、加盟者が従うべき事項として、加盟店舗の標章・仕様・内外装・什器・情報システム機器及びユニフォームなどの定め、Zシステムを守るための義務、店長・マネジャー候補者への研修受講の義務、年中無休・24時間営業の義務、売上送金の義務、本部フィーの支払義務などの加盟者の義務は、本件フランチャイズ契約上の加盟者の義務としてあらかじめ本件契約に明記されたものであり、本件契約を締結することによって負担する義務であるから、B社からの加盟者に対する個別の依頼により負担したものではない。

≪B社の指導について≫
加盟者は、本件フランチャイズ契約上、推奨商品及び仕入先、商品の発注、品揃え、陳列方法、接客、清掃、営業費管理、従業員雇用・労働条件、従業員の教育・資格制度の利用などについて、B社から指導を受けることとなっており、実態としても、B社の従業員であるSVが加盟店舗を毎週訪間し、上記各事項について指導し、経営力審査基準に従って採点し、その結果を伝えるなどして指導を行っており、加盟者がその指導を受け入れる場合があることが認められるが、B社の指導に従わないことや経営力審査基準の2次審査基準において低評価であったことのみを理由として、再契約を拒否されたわけではないと認められる。
したがって、再契約の可否をB社が自由に決めると定められていること、加盟者又は法人加盟者代表者が店舗運営による引出金及び配分金で生計を立てていることをもって、加盟者又は法人加盟者代表者が、事実上、会社の指導に従わざるを得ない関係にあったと認めることはできない。

➣小括
以上から、加盟者又は法人加盟者代表者が、B社からの個々の業務の依頼を受ける関係にあるとはいえず、個々の業務の依頼に対し基本的に応ずべき関係があるとは認められない。

⑤広い意味での指揮監督関係、時間的場所的拘束

➣広い意味での指揮監督関係について
≪B社から加盟者に対する指導があったこと≫
B社は、加盟者に対し、加盟店舗運営のマニュアルを配布したり、覆面調査などに基づく指導、各種研修による指導などを行っていたところ、直営店舗と差異がないものもあった。

≪B社の指導を加盟者が遵守する必要の有無≫
他方で、B社の加盟者に対する上記アの指導は、本件フランチャイズ契約上、B社が加盟者に提供するZ経営・ノウハウ及び店舗経営の支援であって、加盟者の加盟店舗の経営を支援し、加盟店舗の売上高を高めるためのものであるから、本件契約上、加盟者がこれに従うことを義務付けられる類いのものではない。

➣一定の時間的場所的拘束について
本件フランチャイズ契約は、特定の店舗物件について締結されるものであるから、加盟者店長が労働力を発揮する場所は加盟店舗以外に考えられず、場所的な拘束は生じているが、加盟者店長がいつ、何時間、どの時間帯に店舗運営業務に従事するかを決定するのは加盟者店長自身であり、B社は、上記事項を決定する権限はなく、決定している実態もない。

➣小括
以上のことから、加盟者又は法人加盟者代表者が店長(加盟者店長)として加盟店舗で就業する際、B社から詳細な指導がされ、場所的拘束も受けるものの、指導は加盟者の経営を支援し売上高を高める目的のものであり、本件契約上、加盟者がこれに従うことが義務付けられているものではなく、また、従わないことのみを理由として加盟者が不利益に扱われることはなく、事実上従わざるを得ないものとはいえないから、広い意味でも、加盟者店長が会社の指揮監督下で労務提供しているとは認められない。
また、加盟者店長が、B社から時間的拘束を受けている事実もない。

⑥顕著な事業者性

加盟店舗における顧客との取引については、独立した会計が設けられ、顧客の取引に必要な費用は加盟者が負担し、加盟店舗の取引による利益は、加盟者に全額が帰属し、損失は、最低保証金の適用により一部が補填されることがあるが、それ以外は加盟者に帰属している。

そして、加盟者は、加盟店舗の営業時間、仕入先、仕入価格及び販売価格については制約を受けるが、本件契約締結の際、出店候補地における契約の可否を選択することができ、本件契約締結後は、加盟店舗で販売する商品の種類及び数量を決定することができ、値下げ販売も一般的には制約なく可能であり、B社の推奨商品以外の商品の販売も可能である。従業員の雇用についても裁量がある。
これらによって、接客、清掃、品揃えといった小売業の基本的なサービスを向上させたり、廃棄ロスを削減したり、従業員の給料を削減したりするなど、自らの判断によって、損益を変動させる余地があるといえる。

また、加盟者には、複数店舗経営や契約形態変更によって加盟店舗から得る利益を拡大できる可能性があり、他人労働力も、制限なく利用していた。
これらのことから、加盟者は、恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行える立場にあり、顕著な事業者性があるといえる。

①から⑥までの要素を総合したまとめ

①から⑥の検討によれば、会社による契約内容の一方的・定型的決定がある(②)といっても、加盟者店長は、労組法上の労働者とは認められない
なお、以上の①から⑥までのことは、全ての加盟者組合員に当てはまる

不当労働行為の成否

A組合の主要な構成員である加盟者組合員が労組法上の労働者とはいえないことからすれば、本件各団交申入れ当時、組合は、労組法上の労働者がその構成員の主要部分を占め、かつ、同法上の労働者が運営及び活動を主導している団体であったとはいえず、本件各団交申入れは、労組法7条2号にいう「労働者の代表者」による「団体交渉」の申入れではないから、本件団交拒否は、労組法7条2号の団体交渉拒否には当たらず、不当労働行為は成立しない。

結論

以上より、裁判所は、A組合による救済申立てを棄却した本件命令に違法があるとはいえないとして、A組合の請求を棄却しました。

解説

問題の所在

本件ではコンビニのフランチャイズ加盟店主らの労働者性が問題となりました。
一言で労働者性と表現しても、労働基準法上の「労働者」と労働組合法上の「労働者」の定義は異なります。
労働基準法上の「労働者」とは、「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」(労基法第2条1項)をいい、他方、労働組合法上の「労働者」とは、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」(労組法第3条)をいいます。
繰り返しになりますが、本件では、コンビニエンスストアのフランチャイズ・チェーンを運営するB社(ファミリーマート)との間でフランチャイズ契約を締結して店舗を経営する加盟店の加盟店主らが、「労働組合法上の労働者」に該当するか否かが争われました。

本件のポイント(セブンイレブンジャパン事件との相違)

全般的かつ一般的に労働者性を判断する必要ないことについて

本判決は、A組合は、B社との間で2FC契約を締結した個人加盟者であり、かつ、加盟店舗で店長を務める者が組合員の過半数を占めているところ、本件で問題となっているのは、まさにこのタイプの加盟者の労働者性であることから、これとは異なるタイプの加盟者(具体的には、加盟店舗の店長を務めていない者や店舗運営業務に従事したことがない者)についてまで、全般的かつ一般的に労働者性を判断する必要がないと示しています。

この点、セブンイレブンジャパン事件では、フランチャイズ・チェーンに属する加盟者に関して、全般的かつ一般的に労働者性を検討する姿勢を示しており、この点で本件との相違が見られます。

判断基準について

本判決では、労組法上の労働者性を判断するにあたり、
①労務供給者が相手方の事業遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されているか(事業組織への組入れ)
②契約の締結の態様から、労働条件や提供する労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか(契約内容の一方的・定型的決定)
③労務供給者の報酬が労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性格を有するか(報酬の労務対価性)
④労務供給者が、相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係があるか(業務の依頼に応ずべき関係ないし諾否の自由)
⑤労務供給者が、広い意味での指揮監督下において労務を提供していたか、一定の時間的場所的拘束を受けていたか
という①から⑤の要素を積極的要素として考慮し、
⑥労務供給者が当該事業のための相応の設備、機会、資金等を保有し又は他人を使用していることなどにより、その業務につき自己の才覚で利得する機会を恒常的に有するかなど事業者性が顕著であるか(顕著な事業者性)
については、消極的要素として考慮すべきであるとしています。
この点、セブンイレブンジャパン事件では、労働者性を検討するにあたり、特に⑥の顕著な事業者性を重視しており、かかる観点においても本件との相違が見られます。

フランチャイズ契約については弁護士に相談を

本判決は、セブンイレブン事件判決と同様、コンビニオーナーのみならずフランチャイズ契約における加盟店の労組法上の労働者性に関して判断する上でとても参考になる判決です。
フランチャイズ契約は次第で別の結論になることもありえますので、この点について悩んだ場合には、ぜひ弁護士に相談されることがおすすめです。

また、そもそもフランチャイズ契約は専門用語も多く、とても複雑な契約ですので、契約締結前から弁護士に契約書の内容などを確認してもらい、留意すべき事項や契約後に生じる可能性のあるトラブルなどについても事前によく確認しておくことが肝要です。