法律コラム

父の死亡の日から23年以上が経過した後に提起された認知の訴えは適法か?【千葉家裁館山支部令和5年7月7日判決】

弁護士法人ASKの弁護士相談・顧問契約をご希望の方はこちらまで

認知の訴えとは?

民法787条本文では、「子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる」と定めています。
すなわち、民法は、父の意思によらない強制認知の方法を認めているのです。
このような認知の訴えは、判決がなされることにより、父子関係を発生させるものです。

仮に、父が死亡している場合には、検察官を被告として、認知の訴え(死後認知)を提起することができます(民法787条ただし書、人事訴訟法42条1項)。
ただ、死後認知は、父の死亡の日から3年を経過したときは、訴えを提起することができなくなってしまいます。そのため、死後認知には、出訴期間の制限があるのだ、ということは覚えておく必要があります(民法787条ただし書)。

認知請求などについてお悩みがある場合には、一度、弁護士に相談してみることがおすすめです。ぜひ弁護士法人ASKにご相談ください。


裁判例のご紹介(認知請求事件・千葉家裁館山支部令和5年7月7日判決)

さて、今回は、父の死亡の日から23年以上が経過した後に提起された認知の訴えが適法かどうか?が争われた裁判例をご紹介します。

*判例時報2025/12/15(No.2634号)65ページ以下参照*

どんな事案?

この事案は、Xさんが、平成12年に死亡したAさんの子であるとして、Y(検察官)に対して、Aさんの死亡後23年以上が経過した令和5年3月7日、死後認知の訴えを提起した事案です。

何が起きた?

Xさんについて

Xさんは、昭和54年に出生し、そのおよそ1か月後にAさんの弟であるB名義でXさんを認知する内容の認知届が提出されました。

Aさんについて

Aさんは、平成12年に死亡し、戸籍から除籍されました。

Bさんについて

Bさんは、令和元年7月10日、Xさんを相手方として東京家庭裁判所に親子関係不存在確認調停(後に認知無効確認に申立ての趣旨を変更)を申立て、その後、認知無効確認請求訴訟を提起しました。

認知無効判決

東京家庭裁判所は、令和2年3月6日、BさんによるXさんの認知を無効とする旨の判決(本件認知無効判決)を言い渡し、同判決は同月24日に確定しました。
そして、同判決に基づいて、同月30日、Xさんの戸籍上の父の欄からはBさんが消除されました。令和3年2月28日、Xさんは、Xさんの戸籍上の父の欄からBさんが消除されていることを知らされました。

調査の実施

Aさんがすでに死亡していたことから、Xさんは、AさんとXさんとの父子関係のDNA鑑定は実施できないものの、Aさんの長女であり母が異なるCさんとXさんとが姉妹関係にあるかどうかについてのDNA鑑定を実施しました。
そうしたところ、Xさんは、半きょうだい肯定率(片親だけが共通するきょうだいの可能性)が99.998%であるという結果を得ました。

訴えの提起

そこで、Xさんは、Y(検察官)に対して、Aさんの死亡後23年以上が経過した令和5年3月7日、Xさんが平成12年に死亡したAさんの子であるとして、死後認知の訴えを提起しました。

裁判で問題になったこと(争点)

民法787条ただし書では、父の死亡の日から3年を経過したときは、死後認知の訴えを提起することができないと定められています。
しかし、Xさんは、本件の訴えを、Aさんの死亡の日から23年以上が経過した後に提起していました。

そこで、この裁判では、Xさんの死後認知の訴えが、出訴期間の制限を定める民法787条ただし書との関係で、適法といえるのかどうか?が問題(争点)になりました。


裁判所の判断

この点について、裁判所は、本件の事実関係の下においては、「出訴期間制限の起算日は、認知請求権者であるXさんにおいて、亡Aさん(検察官)に対して認知の訴えを提起して目的を達成することが法的に可能となった、本件認知無効判決の確定の日である令和2年3月24日と解することが相当である」として、Xさんの死後認知の訴えが「適法」であると判断しました。


判決の要旨

以下では、本判決の要旨をご紹介します。

本件におけるXさんの事情

「法が上記出訴期間を定めた趣旨は、身分関係の法的安定と認知請求権者の利益保護との調整にあり、同趣旨からすると、身分関係に関する法的安定性を確保するためには、当事者の認識をもって出訴期間の起算日が左右されると解することは相当ではない。もっとも、本件において、Xさんは、単に父の死亡日を知らなかったのではなく、本件鑑定の結果が出るまでは、亡Aさんが自分の父であることを知らなかったのであるから、亡Aさんの死亡後3年以内に認知の訴えを提起しなかったことはやむを得なかったといえる。また、Xさんは、本件認知無効判決が確定するまでの間、Bさんの子としての身分を有していたのであるから、その間は亡Aさん(又は検察官)に対して認知の訴えを提起しても目的を達成することはできなかったものである。さらに、Xさんは、亡Aさんが死亡して3年以上経過した後に、戸籍上の父であるBさんから認知無効確認請求訴訟を提起され、戸籍上父がいない状態となったものであり、このような場合にまで亡Aさんの死亡日をもって出訴期間の起算日とすることは、認知請求権者であるXさんに酷である。」

出訴期間制限の起算日について

「したがって、本件のような事実関係の下では、出訴期間制限の起算日は、認知請求権者であるXさんにおいて、亡A(検察官)に対して認知の訴えを提起して目的を達成することが法的に可能となった、本件認知無効判決の確定の日である令和2年3月24日と解することが相当である。」

結論

「そうすると、本件訴え提起の日(令和5年3月7日)には、起算日である令和2年3月24日から3年を経過しておらず、出訴期間を徒過したとはいえないから、本件訴えの提起は適法である。」

弁護士法人ASKにご相談ください

さて、今回は、父の死亡の日から23年以上が経過した後に提起された死後認知の訴えが適法かどうか?が争われた裁判例をご紹介しました。

この事案では、原告となったXさんが単に父Aさんの死亡日を知らなかっただけでなく、鑑定結果が出るまで、Aさんが父であることを知らなかったこと、Bさんによる認知無効確認によりその判決が確定するまでBさんの子としての身分を有していたことなどの事情に照らして、“出訴期間制限の起算日は、認知請求権者であるXさんにおいて、亡A(検察官)に対して認知の訴えを提起して目的を達成することが法的に可能となった、本件認知無効判決の確定の日である”という結論を導いている点で注目されます。

認知請求については、複雑な親子関係の問題につながってくることから、なかなか一人で解決することが難しいものです。お悩みがある場合には、ぜひ弁護士法人ASKにご相談ください。

弁護士法人ASKの弁護士相談・顧問契約をご希望の方はこちらまで