法律コラム

証拠提出された画像は捏造されたもの?【大阪地裁令和6年8月30日判決】

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近年では人工知能に関する技術の発展により、さまざまな文書や画像などをAIが作成できるようになりました。
少子高齢化や働き手の不足が叫ばれる中、AIの目覚ましい発展は私たちの生活の利便性向上や負担の軽減などにつながっています。

他方で、「AIは嘘をつく」などともささやかれているように、時にSNSなどで流れてくる情報がフェイクであることもあります。
やはり私たち人間が改めて確認し、基礎となる情報源に誤りはないのかどうか?をきちんと見極めることが大切です。

裁判例のご紹介(損害賠償請求事件・大阪地裁令和6年8月30日判決)

さて、今回は、裁判の証拠として提出されたSNS上の投稿に関する画像が捏造されたものではないか?ということが問題になった裁判例をご紹介します。

*判例時報2025/10/15(No.2630号128ページ以下を参照しています*

どんな事案?

この事案は、Xさんが、ツイッターのウェブサイトにYさんらが行った投稿の内容が、Xさんの死亡した子に対する敬愛追慕の情を侵害するものであるなどと主張として、Yさんらに対して、損害賠償金の支払いなどを求めた事案です。

何が起きた?

Xさんについて

原告となったXさんには、長女Dさんがいました。
しかし、Dさんは、令和2年5月23日に自死しました。

ツイッター上の投稿

Xさんは、Dさんの亡き後、Dさんのツイートに対する返信(本件返信)が投稿されたような外観の画像(本件画像)を入手しました。

弁護士Cへの対応依頼

Xさんは、本件返信によりDさんが誹謗中傷されたと考えて、C弁護士に対応を依頼しました。

発信者情報の開示

C弁護士は、令和2年6月10日以降、Xさんの代理人として、本件画像に本件返信の投稿主体として表示されたアカウント(本件アカウント)に係る発信者情報開示請求に関する手続を行いました。
そして、一定の時期にされた本件アカウントへのログインの際のIPアドレスの一部を管理する経由プロバイダから、当該IPアドレスを割り当てられた契約者がYさんである旨の発信者情報の開示を受けました。

訴えの提起

そこで、C弁護士は、令和3年8月19日、Xさんの訴訟代理人として、Yさん及びその同居の家族のうち3名(Yさんら)を相手に、損害賠償金の支払いなどを求める訴えを提起しました。

争われたこと(争点)

Xさんの主張

Xさんは、Dさんの亡き後、Yさんらが本件返信を本件アカウントからツイッターに投稿したものであり、死亡した子に対する敬愛追慕の情が侵害されたなどと主張して、Yさんらに対して損害賠償の支払いを求めていました。

Xさん
Xさん

Yさんたち、ツイッターにこういう投稿しましたよね? 投稿の画像が残っていますよ!

Yさんらの反論

これに対して、Yさんらは、
・本件画像は捏造されたものであり、本件返信が本件アカウントから投稿された事実自体が存在しないこと
・仮に本件返信が本件アカウントから投稿されていたとしても、当該投稿はYさんらがしたものではないこと
から、YさんらがDさんを誹謗中傷した事実はないと反論していました。

いやいや、私たち、そんな投稿してません! そもそもその画像、捏造ですよね?
画像以外の証拠はないですよね?

Yさんら
Yさんら

裁判で問題になったこと(争点)

そこで、裁判では、Yさんらが本件返信をツイッターのウェブサイト上に投稿したのかどうか?が問題(争点)になりました。

*なお、その他の争点については解説を省略しています。


裁判所の判断

裁判所は、Xさんが証拠としていた本件画像は捏造されたものである可能性を否定できず、本件画像があることをもって直ちに本件返信が本件アカウントから投稿されたと認めることはできない、としてXさんの請求が認められないと判断しました。


本判決の要旨

裁判所はなぜこのような判断をしたのでしょうか?
以下では、本判決の要旨をご紹介します。

「Xさんは、本件返信が本件アカウントから投稿されたことを前提に、Yさんらが当該投稿をしたと主張して、本件画像(…)を証拠として提出する。

しかしながら、本件画像はDさんのツイートへの返信投稿のような外観を有するところ、返信投稿であれば返信先や投稿日時が表示されるはずであるにもかかわらず(…)、本件画像にはこれらの表示がない(…)。そして、本件画像が、その外観に照らし、返信投稿自体ではなく、ツイートに添付された画像を表示させた画面をスクリーンショットしたものと認められること(…)をも併せ考慮すると、本件画像については、トリミング(切り抜き)等の加工がされている可能性が高いものといえる。さらに、(…)本件画像の出所は不明であり、C弁護士は本件返信自体の存在を確認できなかったところ、Dさんの死亡の翌日である令和2年5月24日に本件画像が添付されたツイートを投稿したアカウントについては、捏造した画像を投稿しているとの指摘がインターネット上でされており、本件画像についても同アカウントの利用者が捏造したものであるとするツイートがされていることが認められる(…)。

以上によれば、本件画像は捏造されたものである可能性を否定できないから、本件画像があることをもって直ちに本件返信が本件アカウントから投稿されたと認めることはできず、ほかにこれを認めるに足りる的確な証拠もない。そうすると、本件返信が本件アカウントから投稿されたことを前提とするXさんの請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がない。」

弁護士法人ASKにご相談ください

さて、今回は、裁判の証拠として提出されたSNS上の投稿に関する画像が捏造されたものではないか?ということが問題になった裁判例をご紹介しました。
裁判所は、本件画像の外観や状況等を丁寧に検討した上で、捏造されたものである可能性を否定できないとして、本件返信がYさんらの本件アカウントから投稿されたと認めることはできないとして、Xさんの請求を退けています。

裁判において証拠の提出は、自らの主張を根拠をもって説明するためにとても重要です。
しかし、証拠そのものに捏造などの問題があると、本件のように請求が認められないことにつながってしまいます。

どのような証拠を提出すべきか?はとても悩みの深い問題です。
裁判を起こしたいとき、裁判を起こされたときの対応についてお悩みがある場合には、ぜひ弁護士法人ASKにご相談ください。

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