マンションの競売開始決定が取り消された?【大阪地裁令和6年9月5日決定】
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マンション所有者の共同の利益のための競売(59条競売)とは?
いわゆるマンションなどの区分所有建物では、区分所有者による管理費の滞納が大きな問題の一つとなっています。
「一緒に住んでいる住民だから、あまり情け容赦のない取り立てはしたくない・・・」という思いがある一方で、やはり管理費などをきちんと支払ってもらえないと、最終的には区分所有建物それ自体や他の所有者に対して大きな不利益を及ぼすことになります。
そこで、区分所有法(正式名称:「建物の区分所有等に関する法律」)第59条では、「区分所有権の競売の請求」に関する規定がおかれています。
具体的には、
・区分所有者が、「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」(まさに管理費の滞納がこの一例です。)を行って、
・「区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」には、
・他の区分所有者の全員又は管理組合法人が、集会の決議に基づいて、訴えにより、その区分所有者の区分所有権と敷地利用権の「競売」を請求することができるのです。
この定めは、「59条競売」などと略されることもあります。
ただ、注意したい点としては、この競売を申し立てるためには、その前提となる集会決議や判決などが必要となることです。いきなり「競売」だけを申し立てることはできないので、一つ一つ丁寧にステップを踏まなければなりません。
区分所有建物をめぐる問題についてお悩みがある場合には、弁護士法人ASKにご相談ください。
裁判例のご紹介(不動産競売申立事件・大阪地裁令和6年9月5日決定)
さて、今回は、59条競売をめぐり、競売開始決定が取り消されてしまった事案をご紹介します。

どんな事案?
この事案は、裁判所において区分所有者に対する59条競売が認められ、競売開始決定がされた後に、実は競売開始決定前に被告であった区分所有者(相手方)が死亡していたことが判明したという事案です。
何が起きた?
当事者について
申立人は、Aビル管理組合の理事長です。
他方、相手方は、Aビル内の区分所有建物である本件物件の区分所有者でした。
訴えの提起
申立人は、相手方が、Aビルの共用部分に物品を放置したり、他の居住者との間でトラブルを起こしたり、騒音を発生させたりしているなどとして、区分所有法59条1項に基づいて、相手方に対し、区分所有権競売請求の訴えを提起しました(本件訴訟)。
競売を認める判決
そして、裁判所は、令和6年4月15日、本件訴訟の口頭弁論を終結し、同月22日、申立人の請求を認める判決(本件判決)を言い渡しました。
本件判決は、同年5月3日、被告であった相手方に送達され、同月17日の経過により確定しました。
競売の申立て
本件判決を受け、申立人は、令和6年6月3日、本件判決に基づいて、不動産競売を申立てました。
競売決定
これに対して、裁判所は、令和6年7月25日、申立人の強制競売の申立てを認め、競売開始決定(本件決定)をしました。
相手方が死亡していた事実の判明
ところが、本件決定の後に、実は、相手方が、令和6年7月11日から20日までの間(推定)に、死亡していたことが判明しました。

裁判で問題になったこと
本件において、裁判所は、本件判決に基づいて、令和6年7月25日、申立人の強制競売の申立てを認め、競売開始決定(本件決定)をしていました。
ところが、本件決定の後に、相手方が実は本件決定よりも前に死亡していたことが判明しました。
そこで、このような場合、競売開始決定はどうなるのか?が問題になりました。
裁判所の判断
この点、裁判所は、相手方が本件訴訟の口頭弁論終結後に死亡していることから、申立人は本件判決に基づいて59条競売を申し立てることはできない、として本件競売開始決定を取り消す判断をしました。
本決定のポイント(要旨)
裁判所はなぜこのような判断に至ったのでしょうか。
以下では本決定の要旨をご紹介します。
▶︎競売請求訴訟の口頭弁論終結後に区分所有者が死亡した場合、当該区分所有者に対する確定判決の効力は、その承継人には及ばない
「法59条1項に基づく競売(以下「59条競売」という。)は、競売請求権の存在を証する確定判決が提出された場合に限り、開始すべきこととされている(法59条、民事執行法195条、181条1項1号)。59条競売の開始決定前に、当該確定判決で被告とされていた区分所有者が死亡した場合、当該区分所有者は59条競売の当事者とはなり得ないから、当該確定判決に基づき59条競売を申し立てるためには、当該確定判決の効力が当該区分所有者の承継人(相続人又は相続財産法人)に対しても及ぶ必要がある。
そこで検討すると、59条競売は、特定の区分所有者による共同の利益に反する行為により、共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共同生活の維持を図ることが困難である場合に、当該区分所有者の区分所有権を剥奪して同人を区分所有関係から排除することにより、その障害を除去することを目的とするものである(法59条1項、57条1項、6条1項)。そして、59条競売を請求する訴訟(以下「競売請求訴訟」という。)においては、当該区分所有者が上記のような属性を有するか否かが審理の対象となるが、そのような属性は、当該区分所有者固有のものであって、その承継人に受け継がれる性質のものではない。また、上記のような59条競売の目的は、区分所有者が変われば、達せられることになる。
このような59条競売の性質に鑑みれば、競売請求訴訟の口頭弁論終結後に区分所有者が死亡した場合、当該区分所有者に対する確定判決の効力は、その承継人には及ばず、当該確定判決に基づいて59条競売を申し立てることはできないと解すべきである。」
▶︎本件の検討
「これを本件についてみると、前記(…)のとおり、相手方は、本件訴訟の口頭弁論終結後に死亡しているから、本件判決に基づいて59条競売を申し立てることはできないというべきである。」
▶︎結論
「そして、本件決定は、上記の点を看過して本件判決に基づきなされたもので、この点につき重大な瑕疵があるというべきであるから、職権によりこれを取り消すのが相当である。」
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さて、今回は、裁判所において区分所有者に対する59条競売が認められ、競売開始決定がされた後に、実は競売開始決定前に被告であった区分所有者(相手方)が死亡していたことが判明したという事案をご紹介しました。
そして、裁判所は、59条競売の性質に照らして、競売請求訴訟の口頭弁論終結後に区分所有者が死亡した場合には、当該区分所有者に対する確定判決の効力は、その承継人には及ばないため、当該確定判決に基づいて競売を申し立てることはできない、との見解を示したうえ、競売開始決定を取り消すとの結論を導いています。
訴えの提起や口頭弁論終結の前後のタイミングで、訴訟の当事者が亡くなるというケースは一定数見られるところですが、そのタイミングや請求している権利の内容などによって、その後の取り扱いや裁判の流れなども異なってきます。
もし、訴訟が係属している中で、お悩みが生じた場合には、弁護士法人ASKにご相談ください。
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