下請法とは?ヨドバシカメラに対して公正取引委員会から勧告が!【弁護士が解説】

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下請法とは
親事業者が守らなければならない下請法
建設工事などをはじめとして、受託した業務を下請会社に依頼することがあります。
親事業者から下請会社に対して、きちんとした契約書などに基づいて、適正な価格で依頼されていればよいのですが、いわゆる買い叩きのような言動がなされてしまうことも頻繁にみられるところです。
そこで、下請取引の公正化・下請事業者の利益保護を目的として、下請法(正式名称:「下請代金支払遅延等防止法」という法律があり、親事業者などが守らなければならないルールが定められています。
親事業者と下請事業者は誰が該当する?
下請法の適用を受ける「親事業者」や「下請事業者」の正確な定義については、下請法の中で決められています(下請法2条1項〜8項)。
簡単に図で示すと以下のような形になります。
(※経済産業省ウェブサイト:「株式会社ヨドバシカメラに対する下請法に基づく勧告が行われました」・関連資料「(令和7年9月8日)株式会社ヨドバシカメラに対する勧告について(PDF形式:281KB)PDFファイル」を参考にしています。)
①物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物作成・役務提供委託の場合

なお、政令で定める情報成果物作成委託とは、「プログラム」の作成委託をいい、政令で定める役務提供委託とは、「運送、物品の倉庫における保管、情報処理」をいいます。
②情報成果物作成・役務提供委託(政令で定めるものを除く。)の場合

親事業者が義務付けられていること
下請法では、親事業者が行わなければならないこと(義務)として、以下の4つのことが挙げられています。
親事業者が禁止されていること
また、下請法では、親事業者がしてはならないこと(禁止事項)として、以下の11個のことが挙げられています。
- ①受領拒否の禁止(下請法4条1項1号)
- ②下請代金の支払遅延の禁止(下請法4条1項2号)
- ③下請代金の減額の禁止(下請法4条1項3号)
- ④返品の禁止(下請法4条1項4号)
- ⑤買いたたきの禁止(下請法4条1項5号)
- ⑥購入・利用強制の禁止(下請法4条1項6号)
- ⑦報復措置の禁止(下請法4条1項7号)
- ⑧有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(下請法4条2項1号)
- ⑨割引困難な手形の交付の禁止(下請法4条2項2号)
- ⑩不当な経済上の利益の提供要請の禁止(下請法4条2項3号)
- ⑪不当な給付内容の変更・やり直しの禁止(下請法4条2項4号)
義務の違反や禁止行為の違反には勧告のおそれがある
親事業者が、下請法に定められている義務に違反したり、禁止行為に該当する行為をしたりすると、公正取引委員会から「勧告」を受けることになります(下請法6条、7条)。
公正取引委員会が親事業者に対して行われる「勧告」の内容としては、速やかに減じた額を支払うことや下請事業者の給付にかかる物を再び引き取ること、下請代金の額を引き上げること、購入させたものを引き取るべきこと、その他の必要な措置をとるべきことなどが挙げられます。
公正取引委員会からヨドバシカメラに対して勧告が行われました
さて、そんな下請法違反をめぐり、今回(令和7年9月8日)、公正取引委員会から株式会社ヨドバシカメラに対して「勧告」が行われました。
以下では、どんな事案だったのか?をご紹介します。
なにが起きた?
ヨドバシカメラから下請事業者への委託
親事業者であるヨドバシカメラ(家庭用電気製品等の販売等を業とする会社)は、下請事業者(資本金の額が1000万円以下の法人事業者)に対して、以下のような下請取引を委託していました。
①自社の店舗等で販売する家庭用電気製品等の製造の委託(3名に対して)
②自社が請け負う家庭用電気製品等の修理の委託(2名に対して)
③自社が請け負う家庭用電気製品等の設定等の役務の提供(1名に対して)
下請法違反の行為
ところが、ヨドバシカメラは、令和6年1月から令和7年3月までの間、リベートなどの名目で、下請代金の額に一定率を乗じて得た額または一定額を下請代金の額から差し引くことにより、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減じていました。

※なお、ヨドバシカメラは、令和7年8月22日に、下請事業者に対して、減額後の代金は支払っています。
勧告の内容
そこで、公正取引委員会は、ヨドバシカメラに対して、次のような勧告を行いました。
①ヨドバシカメラが、取締役会の決議で、以下2点を確認すること
・下請事業者への減額行為が、下請法4条1項3号に掲げる行為に該当し、同項の規定に違反するものであること
・今後、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減じないこと
②ヨドバシカメラが、今後、下請法4条1項3号に掲げる行為に該当し、同項の規定に違反する行為を行うことがないよう、自社の発注担当者に対する下請法の研修を行うなど社内体制の整備のために必要な措置を講ずること
③ヨドバシカメラが、自社の役員と従業員に、以下2点を周知徹底すること
・減額した金額を下請事業者に支払ったこと
・上記①、②に基づいて行った措置
④ヨドバシカメラが、取引先事業者に、以下2点を通知すること
・減額した金額を下請事業者に支払ったこと
・上記①、②に基づいて行った措置
⑤ヨドバシカメラが、上記①〜④に基づいて行った措置を速やかに公正取引委員会に報告すること

下請代金の減額は下請法違反の行為です
冒頭でもご説明したように、下請法では、親事業者が守らなければならないルールが定められています。
中でも、下請法は、下請事業者の責に帰すべき理由(責任)がないにもかかわらず、発注時に定められた金額から一定額を減じて支払うことなどを全面的に禁止しています。
この減額については、値引き、協賛金、歩引きなどの名目、方法、金額の多少を問いません。
また、下請事業者との合意があっても、下請法違反となるため注意が必要です。
弁護士法人ASKにご相談ください
さて、今回は、下請法とは?ということから、ヨドバシカメラに対して行われた公正取引委員会の勧告の内容まで、盛りだくさんに解説させていただきました。
最近では、フリーランス保護法違反に基づく勧告なども行われており、公正取引委員会の活動も活発です。
下請事業者の方やフリーランスの方などに対して委託を行う場合には、関係する法律に違反することがないようくれぐれも留意しましょう。
下請法やフリーランス保護法についてお悩みがある場合には、弁護士法人ASKにご相談ください。
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