労働問題

問題社員は解雇できる?適切な対応を弁護士が解説

問題社員対応①社員の問題点の分析

なぜその社員を問題と思っているかの問題点の抽出が重要です。

問題点ごとに対処が異なります。

問題点の例)問題行動、不正行為、性格、パフォーマンス、単に経営者と反りが合わない、など

問題社員対応②ゴールをどうするのか

採用にもコストがかかっています。退職、解雇にも大きなコストがかかるリスクがあり、問題点が改善できて、会社の戦力にする道もあります。

退職、解雇はいきなりやるのではなく、逆算して入念に準備して行う必要があります。

問題社員対応③問題社員への対応の検討

① 問題行動の分析

② 問題に対し、どのように対応するかの方針決定

  ・教育、指導をして改善を促し、戦力となってもらう。

  ・退職してもらう

    ・懲戒処分としての諭旨解雇、懲戒解雇

    ・普通解雇

    ・退職勧奨(合意退職)

③ 方針に基づき、問題に対して、対処し、証拠化する。

  ・教育、指導については業務報告書で残す。

  ・軽い問題行動については口頭注意などを適切に行い、証拠化する。

  ・一定程度問題行動については、軽度な懲戒処分を行う。

  ・問題行動について労働者と話し合いをする。

  ・労働者に問題点の気づきを与えるために日報をつけてもらう。

問題社員対応の出発点としての就業規則

問題社員の問題行動に対応していない就業規則の場合、就業規則を整備するところから対応を迫られます。

そもそも就業規則に懲戒の種類と事由がなければ懲戒処分はできません(最高裁判例)。

就業規則自体を問題社員対応マニュアル化してしまえば、対応を定型化することができます。

別途懲戒処分運用マニュアル、指導・教育マニュアルを作成することで対応を定型化することも重要です。

就業規則に懲戒処分の種類と処分に対応した懲戒事由を定める。

懲戒処分については、最高裁判決(国鉄札幌運転区事件 最高裁第3小法廷判決昭和54年10月30日)において、使用者は規則や指示・命令に違反する労働者に対しては、「規則の定めるところ」により懲戒処分をなし得るとしています。したがって、就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできません。

懲戒の種類に応じて(厳重注意、減給~降格、諭旨解雇・懲戒解雇)、それぞれ懲戒事由を具体的に定める必要があります。

懲戒事由を具体的に定めることで、懲戒をする会社側も、迷いやブレがなくなり、負担が少なくなります。

懲戒事由を種類ごとに定めない就業規則も散見されますが、会社が柔軟に処分を下せるメリットはあるものの、会社の裁量の幅が広すぎると、適切な処分を下せなかったり、担当者によって処分が異なって不公平が生じ、ひいては懲戒処分が無効になる可能性もあります。メリット・デメリットを考慮して、大きく三分類程度で規定しておく方がよいと思われます。

懲戒処分運用マニュアルで運用することも考えられるところです。

懲戒事由を定めるにあたっての注意

  • 懲戒事由の内容が合理的であること

   あくまで企業の円滑な運営上必要かつ合理的なものでなければなりません。

  • 懲戒事由と懲戒処分が適正であること

   規定する懲戒事由に対する懲戒処分が重すぎると処分が無効になる可能性があります。

  • 懲戒事由が労働者に周知されていること

フジ興産事件(最高裁平成15年10月10日)では、労働代表の同意を得て労基署に届出た事実のみで周知手続きについて認定していない高裁判決を破棄しました。

  •  手続保障も懲戒解雇・諭旨解雇など重い処分には最低限弁明の機会を与えましょう。
  • 重い懲戒事由がない場合、普通解雇を検討する
    • 普通解雇は労働契約法16条により、合理的理由と社会相当性が要件となります。普通解雇についてもその解雇事由を就業規則に定めることが望ましいです。
    • 懲戒解雇、諭旨退職処分の減軽処分的に普通解雇を行うこともあります。
    • 能力欠如などの場合、教育訓練・能力に見合った配置転換などの解雇回避措置を尽くすことが求められます。
    • 懲戒解雇の意思表示をしつつ、予備的に普通解雇をすることもあります。ただし、懲戒解雇しかしなかったのに、後出しで普通解雇を予備的主張する場合は不可。
    • 懲戒解雇後に普通解雇をする場合には、懲戒解雇から普通解雇の間の賃金は発生します。
  • 普通解雇でも手続き保障

   懲戒解雇・諭旨退職のような重い懲戒処分の場合、事前に弁明の機会を付与する必要があります。

普通解雇でも、実質的な懲戒解雇処分の意味合いがあります。従業員の非違行為を理由とする場合には、事前に弁明の機会を与えましょう。

  • そうはいってもまずは退職勧奨

日本の労働法規においてはやはり労働者保護が強く、懲戒解雇、普通解雇には一定のハードルがあり、後で法的な紛争になるリスクもあります。そうであるならば、まずは退職勧奨により、合意退職を試すことがよいと思われます。

弁護士のサポートを受けるメリット

問題社員といっても様々です。誤った方針と誤った対処をすると、会社としても大ダメージを受けます。勢いで事前分析・準備をすることなく、懲戒解雇・普通解雇を行ったがゆえに、解雇無効を主張されることもあります。問題社員への対応に困った場合にははやめにご相談を。