「最後は言い方」リーダーの一言がチームを変える
- イトウの経営Column
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リーダーといわれる人に質問です。
- 会議でまず自分の意見を語っていないか?
- 異論を封じるような言い方をしていないか?
- 他人の意見を聞く気がないのに聞くふりをしていないか?
- 「上の決定」を部下に押しつけていないか?
痛い。耳が痛い。これ、帯に書いてある質問です。売り方、うまいなあ。これは手に取ってしまうでしょう。
ということで、今回紹介する書評は「最後は言い方―これだけでチームが活きる究極のスキル」(L. デビッド・マルケ著、東洋経済新報社)です。
著者は、海軍兵学校のエリート幹部で原子力潜水艦の艦長です。
古いリーダーシップ
まず冒頭で、「古いリーダーシップ」にしたがって嵐の中の航行を強行してしまったがために、乗組員33人を全員死なせてしまった貨物船エルファロの船長の話から始まります。「古いリーダーシップ」といいますが、読んでみると今でもそこかしこの組織で行われている内容ばかりです(それもそのはず、この事故は2105年に起きたものですから。)。でも、その古いリーダーシップ、産業革命のときから変わってないのです。
古いやりかたと、本書が提唱する新しいやり方をまとめると次のとおり
古いやり方 | 新しいやり方 |
時計に従う | 時計を支配する |
強要する | 連携を取る |
服従する | 責任感を自覚して取り組む |
終わりを決めずに続行する | 事前に定めた目標を達成したら区切りを付ける |
権力を証明する | 成果を改善する |
自分の役割に同化する | 垣根を越えてつながる |
本書では、この新しいやり方を、それを機能させるための言葉遣いとともに説明しています。
行動こそ重要という先入観を捨てる
上で見た古いやり方は行動を重視するもの。これは産業革命時のやり方。上がこうしろといったものに対して余計なことを考えていては生産性が落ちるわけです。こうした時代背景においては合理的だった。
ところが、このVUCAの時代、求められるのは、異なる意見を集めてよりよい決断を下すこと。行動とともに思考が求められる時代になっているのです。行動と思考のバランスこそが重要で、行動こそ重要という先入観は捨てないといけません(前に紹介した本でも似たようなことをいっていましたね)。
青ワークと赤ワーク
そこで、仕事を思考モードの仕事(これを「青ワーク」といいます)と行動モード(これを「赤ワーク」といいます)に分け、青ワークのときは多様性を重んじて様々意見を取り入れる、赤ワークとのときは多様性を排してまっすぐに行動する、といった行動様式が求められることになります。
青ワークのときの問いかけ、赤ワークのときの問いかけ
リーダーは、青ワークのときと赤ワークのときとでは、問いかけの方法を変えないといけません。
青ワークでは、メンバーによく考えてもらうため認知負荷をかける必要があります。問いかけの方向性としては、「はい/いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンではなく、答えを考えなければいけないオープンクエスチョンを用いる必要があります。
「君はどう思う?」
「これについて、われわれはどの程度準備ができてる?」
「もっといい方法を採れないか?」
「学んだことは何か?」
他方、赤ワークでは、単純に「はい/いいえ」で答えられる問いかけで十分です。
「やりとげろ」
「現実にしよう」
「これを終わらせよう」
「計画どおりに進んでいるか」
青ワークと赤ワークは柔軟に切り替える
これらの関係は、「まず青ワークをやってから、一心不乱に赤ワークをしよう」という一方通行のものではありません。青ワークをやってから、赤ワークに移行する、赤ワークの途中でもいったん中断して青ワークを実施する、などという行ったり来たりを柔軟に行う必要があるのです。
そこで最初に「時計を支配する」ことからはじめることになります。
時計を支配する
古いやり方では、時間通りに仕事を終えることが何より優先されてしまいます(「時計に従う」)。それがプレッシャーになってしまい、赤ワークをやめられなくなってしまいます。
新しいやり方においてはこの発想を変え、「時計を支配する」ことが必要になります。つまり、適切なタイミングで仕事の中断や小休止を言い出せるようにし、青ワークへの移行を容易にするようにしなければなりません。
本書では、時計を支配するための4つの方法が紹介されています。詳しくは本書をご確認ください。
まとめ
その他、本書では「新しいやり方」をいかに実践するかのメソッドがふんだんに盛り込まれています。
本書は「言い方」という切り口でまとめられていますが、リーダーは強くなくてはいけない、ブレてはいけない、メンバーが迷うことがないよう自分が指針を示さなくてはならない、と思い込んでいる悩めるリーダーにお勧めの1冊となっています。