労働問題

労働審判の申立てを受けたら〜労働審判の流れ〜

会社が労働者との間の法的問題に関する交渉が決裂し、または会社側が労働者との間の契約を打ち切ったり、解雇したような場合、労働者として裁判所の手続きを用いた法的な手段に訴える可能性があります。

労働問題に関しては、いきなり訴訟をするのではなく、早期に解決できる手段として労働審判という制度があり、労働者側として労働審判を申し立てるケースも増えてきています。

以下では労働審判という制度と労働審判の申立がされた場合の会社側の心得について解説いたします。

労働審判とは

 労働審判は、①労働関係に関する個々の労働者と事業主との間に生じた民事の紛争について、②裁判官と労働関係の専門家二名(一名は労働者側、一名は事業主側の経験を豊富に積んだ専門家)で組織する労働審判委員会が、③当事者の申立によって審理し、調停・労働審判を行うことで紛争を解決する制度です(労働審判法1条)。

労働審判は、原則として3回以内で審理を終えなければならず(労働審判法3条2項)、手続きは非公開です(同4条)。したがって早期かつその審理内容は公開されずに紛争の解決がなされます。

労働審判を申立てられた場合の会社側の心得

申立を無視しない。

労働審判の申立がされた場合、その申立を無視し、正当な理由なく審判に出頭しないと5万円以下の過料の制裁に処されるリスクがあります(労働審判法31条)。

また労働審判を欠席することで、労働者の言い分だけを聞き入れられ、会社側に不利な審判がくだされるリスクもあります。労働審判に対しては異議申立手段もあり、異議が出されると訴訟への移行がなされますが、不利な内容の審判が影響しかねません。

したがって労働審判が申し立てられた場合には、これを無視することなく、直ちに会社内で事情聴取や証拠収集、弁護士への相談にとりかかり、労働審判申立書に対する答弁書の作成に取り掛かりましょう。

答弁書の作成

労働審判が申し立てられると、第1回労働審判期日が指定されますが、申立があった日から原則40日以内に期日が指定されます(労働審判規則13条)。あわせて会社側の答弁書の提出期限も定められますが(同14条1項)、第1回労働審判期日までに申立人が当該答弁書の記載内容に準備するに必要な期間を置かなければならないので(同条2項)、申立がなされて会社に申立書が届いてから、実際には2週間程度で答弁書を作成し、提出しなければなりません。

かなり時間としてはタイトなので速やかに担当者からの聞き取り、弁護士との相談をしたうえで、申立書に対する反論となる答弁書の作成する必要があります。

その内容も、単に争うというものではなく、できるだけ具体的な内容で反論する必要があります。あわせて会社の従業員からヒアリングした事実を「陳述書」という書面でまとめて準備します。

会社としての方向性を決める。

担当者からの事情聴取、弁護士との相談を経て会社としての方向性を決めなければなりません。

労働審判の場合、金銭解決となることが多いので、会社として譲れるラインや解決するための予算、どうしても譲れない事項など予め決めたうえで審判にのぞむ必要があります。事案によっては第1回労働審判期日で調停が成立する可能性もあるので、方向性が定まらないと期日が無駄になる可能性があります。

申立書・答弁書の内容を熟読し、内容を整理して準備する。

労働審判の期日では労働審判委員会の委員から直接、会社の担当者に質問がなされます。かかる質問によどみなく対応し、会社としての反論ができるよう担当者は準備をする必要があります。場合によっては想定問答などを用意することもあります。

労働審判期日に出頭する。

労働審判期日では労働審判委員会からの聞き取りが行われます。申立書・答弁書・提出された証拠と審判期日における聞き取りをもとに、双方の合意が見込まれる場合には、労働審判委員会から調停案が提示されます。

聞き取りは双方が同じテーブルに同席して行われることもありますので、直接、相手方当事者の言い分を聞くこともできます。その言い分に反論し、その反論に対して更に再反論がなされるなど、主張がなされ、審理が尽くされると早ければ第1回審判期日でも調停案が提示されることもあります。

事前に方向性を決め、その方向性に沿った調停案であれば、第1回労働審判期日で成立することもあります。双方の溝が埋まらなかった場合には、第2回、第3回と期日が設けられ、合意に至れば同じく調停が成立し、合意に至らなければ労働審判がなされることとなります。

 

労働審判

調停が成立すれば、紛争は解決しますが、双方の溝が埋まらない場合には労働審判がくだされます。

労働審判がなされ、告知を受けたときから2週間で審判は確定します。

当事者が異議を申し立てた場合には、通常の裁判手続きに移行することとなります。

まとめ

以上が労働審判の流れになりますが、労働審判はかなり迅速に対応することが求められます。労働審判が申し立てられた場合には、とにかく早めに弁護士に相談することをおすすめいたします。