労働問題

就業規則違反とは

 就業規則違反とは会社の定める就業規則に違反する行為です。就業規則には会社の基本的なルール、決まり事が規定されており、労働者が守るべき義務、禁止行為なども規定されており、「服務規律」として規定されていることが多いです。

 典型的な就業規則違反行為としては、営業上の秘密を会社に無断で持ち出して漏らしたり、インターネット上で公開したり、会社の車や設備を私用で持ち出すなどのことがあります。

 就業規則違反行為には軽微なものから重大なものまで様々ですが、軽微な違反だからと行って、見逃したり、放置することは、会社の規律や風紀を乱すことなり、職場環境の悪化や他の社員へ悪影響を及ぼしかねません。軽微な違反を見逃すことで、違反がエスカレートして重大な違反に発展することも考えられるため、適切に対処することが必要です。

就業規則のチェック

 そもそも会社の風紀を乱したり、職場環境を悪くする行為を就業規則で禁止していない場合には、就業規則違反として問題を問うことができません。まずはそのような行為を就業規則で規定しているかの確認が必要となります。

現社員の就業規則違反に対する対応方法

1.軽微な就業規則違反

  ごく軽微な就業規則違反については、口頭で就業規則違反であることを指摘して改善を求める程度で済ますことも考えられます。

  この場合、口頭注意は他の従業員に聞かれないよう別室で行い、強い叱責にならないよう注意を促す程度にとどめるべきです。

  なお、口頭注意を行った場合には、業務報告書の形で証拠化すべきです。

  

  また始末書を提出させることも検討すべきですが、次で述べる懲戒処分としてではない、始末書の提出は、従業員が提出を拒否した場合には、それ以上、提出を強制することができません。ただ、始末書の提出を求めて、拒否されたことを含めて業務報告書の形で証拠化すべきです。

2.繰り返される就業規則違反、一定程度以上の重度な就業規則違反

  軽微な就業規則違反について口頭で注意したにもかかわらず、同じ就業規則違反が繰り返されたり、口頭で注意するだけでは済ませられない就業規則違反がある場合には、懲戒処分を検討する必要があります。

もっとも就業規則に懲戒の種類と事由が規定されていなければ懲戒処分はできません。最高裁判決(国鉄札幌運転区事件 最高裁第3小法廷判決昭和54年10月30日)において、使用者は規則や指示・命令に違反する労働者に対しては、「規則の定めるところ」により懲戒処分をなし得るとしています。したがって、就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできなません。

懲戒の種類に応じて(厳重注意、始末書の提出、減給~降格、諭旨解雇・懲戒解雇)、それぞれ懲戒事由を具体的に定める必要があります。

就業規則に懲戒の種類と事由をしっかり規定し、就業規則自体をマニュアル化してしまえば、対応を定型化することができます。

別途懲戒処分運用マニュアル、指導・教育マニュアルを作成することで対応を定型化することも重要です。

懲戒事由を具体的に定めることで、懲戒をする会社側も、迷いやブレがなくなり、負担が少なくなります。

懲戒事由を種類ごとに定めない就業規則も散見されますが、会社が柔軟に処分を下せるメリットはあるものの、会社の裁量の幅が広すぎると、適切な処分を下せなかったり、担当者によって処分が異なって不公平が生じ、ひいては懲戒処分が無効になる可能性もあります。メリット・デメリットを考慮して、大きく三分類程度で規定しておく方がよいと思われます。

3.懲戒事由を定めるにあたっての注意

  • 懲戒事由の内容が合理的であること

あくまで企業の円滑な運営上必要かつ合理的なものでなければなりません。

  • 懲戒事由と懲戒処分が適正であること

規定する懲戒事由に対する懲戒処分が重すぎると処分が無効になる可能性があります。

  • 懲戒事由が労働者に周知されていること

フジ興産事件(最高裁平成15年10月10日)では、労働代表の同意を得て労基署に届出た事実のみで周知手続きについて認定していない高裁判決を破棄しました。

  •  手続保障も懲戒解雇・諭旨解雇など重い処分には最低限弁明の機会を与えましょう。

4.違反者に対して退職勧奨をする。

 重大な就業規則違反に対しては上記のとおり懲戒処分を検討すべきではありますが、常に懲戒処分が無効になるリスクもあります。見過ごすことができない就業規則違反ではあるものの、懲戒解雇では重すぎ、無効となるリスクをはらむ場合には、まずは退職勧奨をすることも検討すべきです。

5.就業規則違反の放置は厳禁

 就業規則違反を放置することは、会社としての秩序が乱れ、職場環境が悪化し、蟻の一穴となって会社が深刻な事態になる可能性もあります。小さな目のうちに、適切に処置をして皆が働きやすい職場環境を構築することが大事です。

 就業規則違反に対処するために、まずは弁護士にご相談ください。